20.思い届けて
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処置室には沈黙が降りていた。
シカマルの息の音だけが室内に響く。
「シカマル、落ち着いて。大丈夫、まだ間に合うから」
サクラが静かに声を発した。
「けど!この薬調合すんのに今までかかってんだぞ!」
今度はいのが首を振る。
「今なら大丈夫」
「今ならって…」
「シカマル、あそこに落ちてる草を取ってくれる?」
サクラはドアの近くを指差した。
シカマルは訝しがりながらもドアの方へ歩いていき、落ちている草を拾い上げる。
そしてハッとした表情を浮かべた。
「これは…」
サクラといのはそっと頷く。
そう、ソライル草だ。
チョウジの治療をするのに最も必要だった薬草。
めったに採集できないため、在庫を切らしていた薬草だ。
これがなかったために、長い時間を掛けて替わりの薬を調合していたのだ。
これさえあれば、難しいチャクラコントロールや薬剤の計量、温度管理などは必要ない。
「さ、急ぎましょ」
サクラの号令で三人はチョウジの治療に取りかかった。
「あいつ、これを渡すために…」
シカマルは眉を寄せ、目を細める。
後悔の念がジワリと胸に広がった。
「後でちゃんと謝んなさいよ」
いのがシカマルの肩を軽く叩いた。
20160411
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