20.思い届けて
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病院に帰り着くなり、マガナミは処置室へと走った。
一刻も早く、ソライル草をいのたちへ、チョウジへ届けたかった。
このソライル草が、きっとチョウジを救ってくれる。
みんなの笑顔をもたらしてくれる。
みんなに謝るきっかけをくれる。
だから、早く。
早く。
階段を駆け上がる。
途中、看護師がそれを咎めたが、聞き流した。
足がもつれる。
踊り場で身をひるがえし、更に階段を上る。
――マガナミーッ!どこにいるの!?
自分を探す彼らの声が聞こえる。
階段を上り切り、廊下に飛び出す。
処置室のドアが見えた。
手前の長椅子に座っていたアスマがこちらに気づき腰を浮かせる。
――ここにいる!今行くから、待ってて!
アスマが声を掛けるのに構わず、マガナミは大急ぎで処置室のドアを開けた。
「えっ!?」
ドアを開く音がすると同時に、中から驚きの声が上がった。
「あっ!」
それから、器具が落下したような大きな物音が響く。
マガナミは思わず首を竦めた。
「いの!」
サクラが慌てて叫ぶ。
いのが手に持っていたフラスコが黒い煙を上げた。
いのはハッと息を飲む。
「ごめん、サクラ…」
室内に緊迫感が満ちた。
マガナミの頭は、憑き物が落ちたように静まり返った。
自分が興奮状態であったと気付いたのは、その時だった。
そしてすぐに、自分の重大な過ちを悟った。
とんでもないことをしてしまった。
おそらく自分は今、彼らの治療を阻害したのだ。
それもかなり重要な作業を。
チョウジが治療台に寝かされ、ぐったりと目を閉じている。
右肩に深い傷が走っているのが見えた。
空気の圧迫感が増していく。
ピリピリした苛立ちを肌に感じた。
息苦しいほどの圧力は、やがて限界を迎える。
そして、一気に爆発した。
「何やってんだ!!お前は!!外で待ってろっつったろ!!」
マガナミは身体を震わせ、咄嗟にソライル草を後ろ手に隠す。
動揺に瞳を揺らしながらシカマルの方を向いた。
「あ、あの…私…」
「外に出てろ」
押し殺した声がマガナミの言葉を遮る。
「あ……」
「出てろ!!」
マガナミは勢いよく踵を返し、処置室から飛び出した。
こんなはずじゃなかった。
こんなはずじゃなかったのに。
私はまた、みんなの足を引っ張ってしまった。
足を引っ張っただけだった。
驚くアスマとカカシの横を通り過ぎ、病院を出て、無我夢中で里を走った。
――ごめんなさい…!
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