生きている意味

20.思い届けて


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「着いたよ」

マガナミが顔を上げると、そこは高くそびえ立つ崖の前だった。

そう、こういう場所の岩と岩の間にソライル草は生えている。

「ここで平気?」

マガナミは力強く頷いた。

「ソライル草を知ってるの?」

マガナミはもう一つ頷く。

「とても珍しい薬草。岩壁の高い場所、月の光の射すところにしか生えないの」

「月の光の射すところ…?」

マガナミは大きく首を巡らす。

夜空には月が静かに浮かんでいた。

今日は半月だ。

柔らかな光を地上に降らせている。

その月の光が、ひと際強く当たっている岩があった。

マガナミは駆け出して岩を登り始める。

カカシはギョッとしてマガナミを止めた。

「ちょっとちょっと!危ないでしょ」

マガナミはチラリとカカシを振り返る。

「大丈夫。慣れてるから」

「慣れてるって…あー待って待って!見つけたならオレが取ってくるから」

カカシは一度マガナミを地面に下ろした。

「どこ?」

「たぶん、あそこ」

マガナミは月光の当たる岩場を指差す。

カカシは小さく頷いて、ほんの数秒のうちにそこに辿り着いた。

マガナミは感嘆のため息を漏らす。

カカシはしばらく辺りを調べてから、手に草を持って降りてきた。

「これ?」

マガナミは差し出された草を手に取り、つぶさに観察する。

葉の側部の細かな切れ込み、裏側に生えた薄く短い毛。

間違いない。

「これ!」

「すぐ戻ろう」

マガナミはしゃがんだカカシの背に素早くおぶさる。

カカシはすぐに地面を蹴った。

マガナミはソライル草を両手で包むように握る。

これできっと、チョウジは助かるはずだ。

ソライル草の効用はマガナミもよく知っていた。

化膿してただれた重度の傷でも、驚くほどの早さで癒える。

傷跡だって残らない。

チョウジの傷だってきっと…。


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