20.思い届けて
(3/6)
「着いたよ」
マガナミが顔を上げると、そこは高くそびえ立つ崖の前だった。
そう、こういう場所の岩と岩の間にソライル草は生えている。
「ここで平気?」
マガナミは力強く頷いた。
「ソライル草を知ってるの?」
マガナミはもう一つ頷く。
「とても珍しい薬草。岩壁の高い場所、月の光の射すところにしか生えないの」
「月の光の射すところ…?」
マガナミは大きく首を巡らす。
夜空には月が静かに浮かんでいた。
今日は半月だ。
柔らかな光を地上に降らせている。
その月の光が、ひと際強く当たっている岩があった。
マガナミは駆け出して岩を登り始める。
カカシはギョッとしてマガナミを止めた。
「ちょっとちょっと!危ないでしょ」
マガナミはチラリとカカシを振り返る。
「大丈夫。慣れてるから」
「慣れてるって…あー待って待って!見つけたならオレが取ってくるから」
カカシは一度マガナミを地面に下ろした。
「どこ?」
「たぶん、あそこ」
マガナミは月光の当たる岩場を指差す。
カカシは小さく頷いて、ほんの数秒のうちにそこに辿り着いた。
マガナミは感嘆のため息を漏らす。
カカシはしばらく辺りを調べてから、手に草を持って降りてきた。
「これ?」
マガナミは差し出された草を手に取り、つぶさに観察する。
葉の側部の細かな切れ込み、裏側に生えた薄く短い毛。
間違いない。
「これ!」
「すぐ戻ろう」
マガナミはしゃがんだカカシの背に素早くおぶさる。
カカシはすぐに地面を蹴った。
マガナミはソライル草を両手で包むように握る。
これできっと、チョウジは助かるはずだ。
ソライル草の効用はマガナミもよく知っていた。
化膿してただれた重度の傷でも、驚くほどの早さで癒える。
傷跡だって残らない。
チョウジの傷だってきっと…。
(3/6)
*←|→#
[bookmark]
←back
[ back to top ]