20.思い届けて
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チョウジ…チョウジ。
私のために…私のせいで。
マガナミは拳を額に当てた。
自分には待つより他に何もできないのだろうか。
彼のために、何か出来ないのだろうか。
その時、いのの言葉が頭を過った。
――急いでソライル草取ってきて――
ソライル草、知っている。
切り立った岩の月の光の射す場所に生える珍しい薬草である。
傷口の化膿止めとして高い効果があり、村でも重宝していた。
ソライル草が必要なんだ。
マガナミは勢いよく立ち上がって走り出した。
アスマとカカシが慌てて後を追おうと足を踏み出す。
カカシが手でアスマを制した。
「オレが行くから。アスマはチョウジについててあげて」
「すまん」
マガナミは外に飛び出した。
というものの、地理は里の一部しか把握していない。
その中に条件に該当する場所は思い浮かばなかった。
どこへ向かえばいいのかと、マガナミは左右を見渡す。
「どうしたのよ、急に」
背後でカカシの声がした。
マガナミは振り向く間も惜しんで声を発する。
「岩場…岩壁か崖、この辺りだと、どこ?」
「岩場?どうしてまた」
マガナミは口早に説明する。
気持ちばかりが急いて何度も口が空回った。
「そっか」
カカシは片目で笑ってすぐに腰を屈める。
「乗って」
マガナミは躊躇いなく彼の背に身を預けた。
強い空気の抵抗を感じた次の瞬間、勢いよく景色が流れ出した。
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