19.信じるということ
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木ノ葉の門をくぐると、そのままチョウジを病院に担ぎ込んだ。
門のところにマガナミが真っ青な顔で立ち尽くしていたが、それに構っている余裕はなかった。
「ったく、この間サワトが運ばれてきたと思ったら!今度は何があったのよ!?」
呼ばれたサクラが白衣に身を包み、手早く器材を準備していく。
「説明は後!とにかく今は急いで!傷を受けてからかなり経ってるの!」
いのが叫んだ。
「またぁ!?サワトといいチョウジといい…!」
サクラは頭を抱える。
「とにかくいの!あんたも手伝って!」
「わかってる!」
二人は慌ただしく処置室に入っていった。
廊下に取り残されたシカマルは、長椅子に腰を下ろして屈みこみ、小さくため息をつく。
すると、伸びた自分の影に別の影が重なった。
シカマルはゆっくりと頭を上げる。
マガナミが遠慮がちに立っていた。
「チョウジ…大丈夫…?」
シカマルは首を振る。
「まだ、わかんね」
マガナミの瞳が動揺に揺れた。
低い位置で組まれた両手が小刻みに震えている。
シカマルの胸を僅かに苛立ちが走った。
――必ず戻る。動くんじゃねーぞ。
チョウジはお前を探しててこうなったんだぞ。
「なあ、マガナミ。お前どうしてあの場を離れたんだ?」
シカマルは抑揚のない声で問う。
マガナミはハッと身体を硬直させて、やがて俯く。
そのまま黙り込んでしまった。
口元が微かに動いている。
言葉を探しているのか、言うのを躊躇っているのか。
「見捨てられた、と思ったんだって」
廊下の角から、カカシが姿を見せた。
その後ろには、カカシが呼んだのだろう、アスマが続いている。
「…見捨てられた?」
シカマルの感情が波打つ。
「お前らがなかなか帰って来なかったから、そう思っちまったんだろ」
アスマは庇うように続ける。
見捨てられただって?
ザワザワと怒気がせり上がってくる。
自分の容体を後回しにして、必死にマガナミを探すチョウジを思った。
――早くマガナミを見つけてあげよう。きっと恐い思いをしてるよ…
「お前は!!」
シカマルは怒声と共に立ち上がった。
マガナミがビクリと震える。
「どうしてそうなんだよ!」
最近、少し自分たちに心を許すようになったと思っていた。
サクラもいのもチョウジも、みなそのことを喜んでいた。
しかし、そう思っていたのはこちらだけだったということか。
こちらの想いは、全く届いていなかったということなのか。
「いつまでそうなんだよ!!」
「シカマル」
アスマが素早くシカマルを諌める。
しかしそれには構わず、シカマルは勢いに任せて怒鳴りつけた。
「ここで待てと言われた場所から離れる時は、何かのっぴきならない状況に追い込まれた時以外にねえ!あっちゃなんねーんだ!お前の勝手な行動が他の仲間にどれだけの危険をもたらすか、わかんねーのか!」
「シカマル!」
その時、処置室からいのが顔を出した。
焦った様子でまくし立てる。
「あんた急いでソライル草取ってきて…」
それを中からサクラが遮った。
「いの!大丈夫だから。それよりシカマルも手伝ってちょうだい!」
シカマルは処置室に視線を向ける。
「…いいか、ここで待ってろ」
僅かばかりの逡巡の後、マガナミを一瞥して振り切るように処置室に入った。
マガナミの瞳にはショックの色がまざまざと浮かんでいた。
20160406
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