18.こころの泉
(9/9)
とうとうシカマルから言及される時が来た。
もう、逃れることは出来ない。
「悪いことしたって反省してた。許してやってくれ。あいつらなりにお前のこと心配してんだ」
マガナミは、きつく結んだ口をほどいた。
「え?」
「お前が故郷にいい感情持ってねぇことは見てりゃわかる。それでもはっきりさせた方がお前がこの里に居やすいと思ったんだと」
シカマルは二人の代わりみたいに笑う。
「もう気にすんな。お前が危険な奴じゃねえってことはわかってっから。これ以上は詮索しねーよ」
そう言うと、今度は彼らしい笑みを浮かべた。
マガナミは戸惑っていた。
詮索しない、井染のことは言わなくていい、シカマルはそう言ってくれている。
マガナミにとってこれ以上ありがたいことはない。
正体がばれなければ、自分が忌まわしい存在だということが知られることはないし、井染に追い返されることもない。
これからも皆と一緒にいられる。
けれど、シカマルはそれで大丈夫なのだろうか?
シカマルは自分を見張り、正体を明らかにする役目を与えられているはずだ。
その役目を放り出すようなことをして平気なのだろうか。
疑問を恐る恐る口にする。
するとシカマルは軽く鼻を鳴らした。
「そう思うなら、変なことすんじゃねーぞ」
ニッと右頬を持ち上げる。
マガナミは一瞬、シカマルの言葉の意味するところがわからずにキョトンとした。
しかし、すぐにこれが彼なりの思いやりだと気づいて大きく頷く。
「しない。しない!」
シカマルは声に出して短く笑ってから、柔らかく目を細めた。
「お前の処遇任されてんのはオレだ。文句は言わせねーさ。心配すんな」
マガナミはにわかに熱を持った胸をキュッと押える。
「ありがとう」
それだけ言うのがやっとだった。
夕日がますます赤く輝き、二人を照らす。
いのからもらったネックレスの石もオレンジ色に染まっていた。
20160321
(9/9)
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