生きている意味

03.目覚める少女


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廊下の突き当たりにある階段を下りながら、チョウジが、少女を気遣うように言った。

「あの子、なんであんなにぼくたちを恐がってたのかな。やっぱり、誰かに嫌な目に合わされたのかな」





そうかもしれない。

あの時の少女の反応は、自分たちを、というよりも、人そのものを恐れているような反応だった。





しかし、と一方の自分が声をあげる。





「そーだな、そーかもしれねー。だが、そーじゃないかもしんねー」

「どういうこと?」





「あいつをただの被害者と決め付けるのは危ねェってことだ」





4日前のあの日、突然背後に現われた少女。

気配を気取ることもできず、あっさりとバックを取られた。

眉間とこめかみがスッと冷たくなって、大雨だったにもかかわらず、冷や汗が頬を伝うのが感じられた。

あの時のことを思い出すと、悪寒が走る。

あれは彼女を置いていった人間の実力だと推測されるとしても、その人物と少女との関係は明らかになっていない。










一階に下り、受付の看護師に、少女のことを伝えると、驚いた顔をして、「先生」と奥の部屋へ駆け込んでいった。

ほどなく、看護師と白衣をまとった長身の男が、パタパタと走り去っていく。

その様子を横目に見送り、二人は病院を後にした。







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