18.こころの泉
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「いの、みたいに?」
いのは大きく瞬きをする。
そしてすぐに破顔した。
「そ!私みたいに!」
サクラが呆れたように肩を竦める。
「そこで謙遜しないのがあんたよね」
「ふふん。褒め言葉は素直に受け取るのが信条なのよ」
サクラの言葉に鼻を鳴らして、いのがマガナミの方を向いた。
すると、マガナミの視線はいのの胸元に落ちている。
いのは首を傾げたが、すぐに何を見ているかを察した。
僅かに口元を緩めて、いのは首からネックレスを外す。
そしてそれをマガナミの首に懸けた。
「あげるわ。マガナミも装飾具くらい着けなさい!」
マガナミは驚いて口をポカンと開ける。
慌てて激しく首を振った。
「も、もらえないよ。悪いよ」
ネックレスを外そうとするマガナミの手をいのが止める。
「いいから、いいから!」
「遠慮することないわよ!いのは他にもたくさん持ってるんだから」
サクラも遠慮するなとマガナミの肩を叩いた。
マガナミは二人を交互に見る。
二人の笑みに後押しされて、コクリと頷いた。
「ありがとう」
「どういたしまして」
いのは満足げに息を吐いた。
マガナミは胸元で揺れるネックレスに触れる。
シャラと石が当たる音がした。
石を包むようにしてそっと持ち上げる。
食い入るようにそれを眺めた。
飴色の艶やかな光沢が綺麗だ。
私の、ネックレス…。
初めて、人からもらった…。
綺麗な、ネックレス。
「ね、マガナミ」
サクラの声がした。
マガナミは釘づけになった目をネックレスから引き剥がし、顔を上げる。
そこには改まった表情を浮かべるサクラといのがいた。
マガナミは首を傾げる。
「私たちさ」
そう言ってサクラは話し始めた。
「マガナミのこと好きよ」
マガナミは驚いて間の抜けた声を出す。
「私もいのも、チョウジも、もちろんシカマルも。それはわかってほしいの」
サクラはマガナミに視線を合わせる。
代わっていのが口を開いた。
「けど、あんたのことよく知らない人たちはそうじゃない。あんたがどこの誰か、どんな人間なのかわからないから不審に思ってる。ね、マガナミ、あんたどこから来たの?故郷はどこ?はっきりさせた方がいいよ。じゃないと、ずっと疑われたままなんだから」
マガナミの体温が一気に下がった。
その分、頭がカァと熱くなる。
身体が震えた。
いつか問われるだろうと、漠然と考えてはいたことだった。
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