18.こころの泉
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「やっほー!マガナミ!」
ある日道を歩いていると、いのとサクラに会った。
「あ…」
マガナミは表情を明るくする。
「何してんの?」
「さ、散歩」
へえ、とサクラが目を細めた。
「外もなかなかいいでしょ?」
マガナミはコクリと頷く。
「私たちも一緒に、いい?」
いのの申し出に、もう一度大きく頷いた。
太陽の光は燦々と木の葉の里に降り注ぐ。
容赦ない熱がジワリジワリと体力を奪っていくのがわかる。
道行く人々の肩も気だるげに下がり、道端に体を横たえる猫たちもぐったりと手足を伸ばしていた。
僅かな風を受けてそよぐ木々の葉の音だけが、せめてもの慰めに思える。
しかし実際に身体に当たるのはただの熱風。
早々にギブアップして、三人はベンチに腰を落ち着けた。
「あー…暑い。もう夏本番ねー」
いのが顔の前で手を扇ぐ。
「ホント。これでまだ暑くなるっていうんだから、やんなっちゃうわ」
サクラは額の汗を拭いた。
マガナミもふうと息を吐く。
疲れも手伝い、三人はそのまましばらく無言のまま息を整えた。
ふとマガナミが気付くと、サクラがこちらを見つめていた。
マガナミはドギマギして視線を行ったり来たりさせる。
「うん、悪くないわね」
サクラは一つ大きく頷いた。
「え?なになに?」
サクラの言葉に、いのがマガナミを覗き込む。
「前髪。私ちょっと責任感じてたのよねぇ」
いのはああと苦笑した。
マガナミの前髪は今、かなり高い位置で切り揃えられている。
この髪形を作ったのは、美容師ではなくいのとサクラだ。
しかしどうやら、二人の思い描いていた髪型とはずいぶん違うものになってしまったらしい。
「まあね。でも、うん、いい!かわいいよ!」
いのはニッと笑った。
サクラもうんうんと頷く。
マガナミは瞬間的に頭がショートした。
それからゆっくりと二人を見比べて、言われたことの意味を考える。
そして顔を真っ赤にした。
身体中の血液が顔に集まってきているんじゃないかと思うくらい熱かった。
「マガナミももっとおしゃれしなくちゃ!せっかく女に生まれたんだから」
力強く言い放ついのをまじまじと眺める。
いのは身体のラインを魅せるタイトな服を着ていた。
生地は腹部の少し上で終わっていて、綺麗にくびれた腰が見えている。
下も、素足を太ももから見せる短いスカートを履いていた。
これはきっと、セクシーというのだ。
それに加えて、今日は胸元にネックレスを下げていた。
黒い紐に雫型のストーンを主役にして、いくつかの大小のストーンが通されている。
いのが動くたびにシャラシャラと軽やかな音を立てた。
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