17.誰なんだ
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しかしその翌日、シカマルはついにマガナミの身体的特徴に近い一族を発見する。
赤茶の髪。
琥珀色の瞳。
『一族辞典』の『な』行、『長郷一族』と合致した。
最近話題に挙がった名である。
定住せず、世界を移動しながら生活している一族で情報屋。
各国の情報を売買することで生活している。
まだ幼かった頃に起こった、異常気象を利用した木の葉侵略の情報を木ノ葉側に流したのもこの一族だ。
情報に特化した一族。
鉱山集落の一件で情報操作された通信文書。
シカマルの背筋を疑念が這った。
嫌な共通項だ。
偶然で片づけるにはあまりに意味深長である。
シカマルは辞典に鋭い視線を向けた。
マガナミ、お前、何者なんだ。
その後の調べで、鉱山集落に旅の一族が集まってきていることが分かった。
村の人口が増えていたのは、この一族が少しずつ村に流入していたからだったのだ。
何の目的があって鉱山集落に集まっているのか。
ただの中継地点なのか、それとも何かを企んでいるのか。
現段階では全く不明である。
この知らせは、すぐにシカマルにも伝えられた。
綱手の前でシカマルは難しい顔をする。
「やつらが何者なのか、詳しいことはまだ分かっておらん」
シカマルは少しためらってから口を開いた。
「オレはその一族に心当たりがあります」
その声色は固い。
「言ってみろ」
「…長郷一族です」
「長郷一族、だと…?」
綱手は険しい表情になった。
「根拠は?」
シカマルは迷った。
それを言えば疑いの目がどこに向くかは明らかだからだ。
しかし、言わぬわけにもいかない。
これは木ノ葉全体の安全に関わる問題だ。
シカマルは自分の行っていた調査とその結果について報告した。
報告を聞いた綱手は執務机の上で手を組んだ。
「情報に精通する長郷一族、今回の事件で操作された情報、その事件と機を同じくして木ノ葉に現れた少女、少女と長郷一族の身体的特徴の一致…なるほど、偶然の一致と考えるには少々符号が多いな」
「はい」
「となると、マガナミと長郷一族の間に何らかの関係がある、ということか」
シカマルは否定も肯定もせず綱手の視線を受け止める。
「けど、マガナミが直接今回の件と関わりがあるかどうかはまだわかりません」
綱手は目を細めてシカマルを窺った。
そしてフッと笑う。
「マガナミの処遇はお前に任せている。お前の思うようにすればいいさ」
シカマルは静かに息を吐いた。
「はい」
「しかし、相手が長郷一族となると下手に動けんな」
綱手は再び表情を引き締めた。
シカマルも同意して眉を寄せる。
「長郷一族は各国の機密情報を握っている。中には当然木ノ葉の情報も混じっているでしょう。下手に刺激すれば…」
綱手は頷く。
「そういうことだ。動くにしても、もっと確実な証拠がいる」
「調査続行ということですか」
「そうだ。謎の一族が本当に長郷一族かどうかというところも含め、慎重に調査を進める」
シカマルは頷いた。
「情報が入り次第連絡する。以上だ」
20160313
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