17.誰なんだ
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それから更にしばらくして、ようやく部屋の戸が開いた。
中から三人が出てくる。
いのとサクラはなんとも微妙な表情を浮かべていた。
「あ、終わったの?」
それを知ってか知らずしてか、チョウジが屈託のない口調で尋ねる。
いのの口元が引きつった。
「まあね!ずいぶんすっきりしたわよ。ね、サクラ?」
「そ、そうね!服も着替えたし、可愛くなったわよ!」
応じるサクラの笑顔は固い。
「とにかく見てあげてよ!マガナミ、出ておいで!」
いのがマガナミの腕を引いた。
たたらを踏んでマガナミが廊下に出てくる。
マガナミは、サクラの言うとおり服を着替えていた。
彼女にしては珍しくスカート姿だ。
コスモス色の膝丈のワンピースからほっそりとした足が覗いている。
ワンピースはシンプルなAラインというタイプだそうで、彼女の細身の身体が際立っていた。
腰まで伸びた赤茶の髪は綺麗に切り揃えられている。
櫛を通したのだろう、しっとりと収まっており光沢も見られる。
しかし問題は前髪だ。
「前髪は思い切って短くしてみたの」
サクラが取り繕うように行った。
短くしたっていうか…パッツンパッツンじゃねえか。
左右に流していたマガナミの前髪は、かなり根元に近い位置でぴっちり整えられていた。
「斬新でしょ?これから流行るわよ!…多分」
いのが続ける。
間違いない。
さっきの危うい会話は、前髪に失敗したということだったのだ。
シカマルは物言いたげな視線を向ける。
「何よ、文句あんの?」
「別に」
しかし、口論になるのは面倒なので、そのまま流した。
「うん、似合ってるよ、マガナミ」
またまたそんな空気を知ってか知らずしてか、チョウジがマガナミをストレートに褒めた。
そういえば、前髪といの・サクラの表情にばかり目がいっていたが、マガナミ本人は今の状況をどう思っているのだろうか。
改めてマガナミの様子を伺う。
まあ、大方の予想通り、居心地悪そうに小さくなっていた。
「よかったわね!似合ってるって!」
サクラがホッと息を吐いてマガナミに笑いかけた。
マガナミは明らかに反応に困った様子で視線を泳がせている。
「照れることないじゃない。ほら、もっと前出て!」
いのに更に押し出された。
しかし、とシカマルは思う。
瞳に拒絶の色は見られない。
どうやら困っているだけで嫌なわけではなさそうだ。
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