生きている意味

17.誰なんだ


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シカマルは大いに驚いた。

マガナミが初対面の相手に、自分から礼の言葉を口にするなんて。

元々、マガナミはどこか人の好意を恐がるところがあった。

最近は少しずつ相手の好意に対して喜びの表情を見せるようになっていたが、ここまで素直に、しかも初対面の相手に積極的に礼を言うなんて考えも及ばなかった。

いのにはこういう力がある。

相手の懐にまっすぐ飛びこんで、警戒を解かせ、素顔を引きだす力が。

「ごめんね、急に知らない人が押しかけてびっくりしたでしょう?」

サクラがマガナミに笑いかけた。

マガナミは首を振る。

「平気」

「ならよかった。彼女はね、最近まで任務で里を離れてたの。私たちの仲間よ」

「なかま…」

マガナミの視線を受けて、いのがにっこり笑った。

「あなたのこと、シカマルやサクラたちから聞いてたんだ。もう里には慣れた?」

マガナミはシカマル、サクラ、チョウジに視線を彷徨わせてから、いのに向かって小さく頷いた。

「みんな、やさしい」

「そ!まぁこの里にいれば大丈夫よ!誰かにいじめられたら私に言いなさい。あたしがやっつけてやるから!」

いのは力こぶを作って見せる。

マガナミは大きく数度瞬きをしていのを見据えた。

「わかった?」

いのが念を押すと、マガナミは大きく首を縦に振るのだった。



それからしばらく、いのとサクラの掛け合いを中心に世間話をした。



シカマルは横目でマガナミを一瞥する。

固くなっている様子はない。

相変わらず表情は乏しいが、リラックスしているように見えた。





『一族辞典』の調査は、ようやく『た』行の後半まで来ていた。

今のところマガナミの身体的特徴と合致する一族は見つかっていない。

今やシカマルはマガナミを危険人物とは思っていなかった。

彼女の素性を明らかにすることが彼女の立場をよくしてくれればよいのだが。

そう考える一方、自分の調査で万が一怪しい人物との中途半端な繋がりが露呈するくらいなら、彼女の素性は謎のままの方がよいのではないだろうかとも思うのだった。

とはいえ、調査を中断するわけにはいかない。

成行きに任せるしかないと、シカマルはため息をついた。


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