16.いの、帰還
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「シカマル、女の子引っかけたんだって?」
一瞬何の話をされているのかわからなかった。
そして、いのがつい最近まで長期任務で里を離れていたことを思い出す。
マガナミの事を言っているのだ。
もうしばらくなかったな、この反応。
「引っかけたわけじゃねーよ。保護したんだ」
めんどくさそうに切り返すと、いのはいやらしく目を細めた。
「ふうん…ねぇ、その子どんな子?」
どんな子、と聞かれてシカマルは考え込んだ。
彼女の素性については、未だ何も分かっていない。
彼女自身も、相変わらず何も語ろうとしない。
疑惑だけは浮上しているものの、事実上、保護した時点からほとんど進展はないのだ。
「わかんねえ。どうやって木ノ葉に来たのか、どこから木ノ葉に来たのか、どうして木ノ葉に来たのか。何一つわかってねーな。何で木ノ葉にいるのかは、本人もわかんねえみてーだ」
ゆっくりと鼻から息を吐いた。
いのは不満げな表情を浮かべている。
「そーゆーことじゃなくて…」
「けど」
口を開きかけたいのは言葉を飲み込んだ。
「あいつ自身に害はねえと思う。あいつは…何言ってもビクビクするし、何聞いても単語しか喋んねーし、人の親切にゃあからさまに怯えるしよぉ。けど、嘘はつかねーし、人を傷つけるようなこともしねえ」
いのは、いや、チョウジとアスマを含めた三人は、一瞬驚いた顔をしてから目元を緩めた。
「へえ。珍しいわね。あんたが積極的に他人弁護すんの」
シカマルはガシガシと頭を掻く。
「一応、保護者だからな。めんどくせーけど」
ふーん。
いのは楽しそうに鼻を鳴らした。
「私も会ってみたいなー。あ、人見知りするんだっけ?」
「あー…」
シカマルは、少し前にサクラとチョウジが訪ねてきた時のマガナミの様子を思い浮かべた。
「いや、会ってやれよ。最初は硬くなるだろーけど、最近少し、里にも慣れてきたみてーだからな」
いのはにっこりと笑った。
「そ!じゃ行くわよ!」
シカマルの眉がピクリと動く。
「今からか?」
「当ったり前よ!チョウジも行くでしょ?」
「うん!」
「おいおい…まあいーけどよ…」
「先生はどうする?」
「あ、いやオレは…」
「野暮なこと聞かないのチョウジ。先生はここでお別れね。じゃあね先生、がんばってね!」
「なっ!何言って…!」
とんとん拍子に話が進んで、三人は奈良家へと向かうのだった。
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