生きている意味

16.いの、帰還


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シカマルとチョウジは、フラフラと木ノ葉の里を散歩していた。

特に会話するでもなく、かといって気まずい思いをすることもなく、ただ目的もなく歩いて行く。

この気楽な沈黙は、チョウジとでなければ生まれない。

シカマルにとっては、いつもの場所で空を眺めている時と同じくらい寛げる時間である。

何よりシカマルを和ませるのは、チョウジも自分と同じ気持ちでいると確信できることだ。



周囲のざわめきを聞き流しながら、二人は無言のまま木ノ葉の道を行く。





木ノ葉茶通りを右に折れ、しばらく進むと、山中家が経営する花屋『やまなか花』が見えてきた。

店が近づいたところで、ちょうど中から見知った顔が出てくる。

一人はいのだ。

店番をしていたのだろう、やまなか花のエプロンをつけている。

そして、いのがニヤニヤしながら眺めているのはアスマだった。

右手で小さな花束を肩に担ぐように持っている。

どうやら今現在の二人の関係は店員と客のようだ。

アスマと花束。

世辞にも似合いの組み合わせとは言えない。

柄ではないことは本人も重々承知のはずで、その上でわざわざ買いに来る理由は一つしかない。

「オッス。いの、アスマ」

呼ばれた声に振り返った二人は、見事に対照的な表情を見せた。

いのは、いいところに来たと言わんばかりにほくそ笑み、アスマは、今来るなよと言わんばかりに顔をしかめる。

もちろん二人は、アスマには構わず二人の元に歩み寄った。

「やぁいの、店番?」

チョウジがニコニコと問い掛ける。

「そうよ!今接客中」

いのは意味ありげな視線をアスマに送る。

「アスマセンセ、買い物っスか?」

シカマルがわざとらしく会話を振ると、アスマはせわしなく視線を動かした。

「お前らには関係ねぇだろうが」

いのはニヤニヤとアスマを見上げた。

「その花、誰にあげるんですかぁ?」

いのの言葉にアスマはギョッとした顔をする。

「別に誰かにあげるとは限らねえだろ」

「紅先生にプレゼントするんでしょ」

何とか体勢を立て直そうと踏ん張っていたアスマは、チョウジのストレートな指摘に一気に顔を赤くした。

「なんだ…その…あれだ…いの、この花は何て言うんだ?」

アスマはあからさまに話題を逸らしにかかった。

しかし、いのはあえてその話題に乗る。

「カーネーションよ。先生知らないの?ちなみに白いカーネーションの花言葉は『純粋な愛』!」

思わず後ろにのけ反ったアスマは、大慌てで別の花を指差す。

「これは?」

「これはカスミソウ。先生ホントに何も知らないのねぇ。ちなみに花言葉は『無垢の愛』よ!」

「だー!これは!?」

「これはシオン。花言葉は『君を忘れない』。素敵でしょ!」



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