16.いの、帰還
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だがまあ、あの時は夕暮れ時で西日もきつかった。
光の色や加減で別人に見えたのだろう。
何より、自分には確固たる記憶がある。
幼少時代から共に過ごしたという、感覚を伴う濃厚な記憶が。
それは何にも変えようのない証拠に思えた。
ん?
何の危惧をしてんだ?オレは。
「シカマル!」
「あ?」
いのに呼ばれて思考を中断する。
見ると二人がこちらを覗き込むようにしていた。
「あ、帰ってきた」
サワトが含み笑いをする。
「帰ってきた?」
「今、どっか行ってたでしょ?シカマルの意識。何考えてたの?」
「どうせ何も考えてないわよ。ボーっとしてただけでしょ」
いのはため息をつくとシカマルをグイグイと押した。
「サワト、まだ長時間起きてるのは辛いみたいだから、そろそろ帰るわよ。じゃねーサワト!また来るわ!」
「うん、今日はありがとう、いの、シカマル」
「お、おう」
返事をする間にもいのにドアの方へと押し出される。
シカマルはたたらを踏みながらサワトを振り返った。
「サワト」
「ん?何?」
「…いや、ゆっくり休めよ」
「うん、そうする」
じゃあな、と挨拶をしたところで、シカマルは病室から転げ出た。
「おい、いの…」
「ごめんごめん!手伝いの途中だったの思い出してさ!早く戻んなくちゃ。じゃーねー!」
文句を言う暇も与えず、いのは風のように走り去ったのであった。
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