生きている意味

16.いの、帰還


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サワトの回復にはかなり時間がかかるらしい。

病室で目を覚まして自分たちと会話した後、サワトは再度意識を失ったそうだ。

それから数日、彼の意識は浮上と沈降を繰り返す状態だったという。

早く退院しろというサクラの叱咤激励も空しく、長期入院は免れない状況となった。





男相手に花を持っていくのも気持ち悪いし、食事制限をされている人間に果物を持っていくわけにもいかない。

何を手土産にするか迷ったシカマルは、結局本を数冊持って病室へ向かった。

読む元気があるかどうかは怪しいものだが。

病室の前まで来て、ドアの取っ手に手を掛けた時、背後から声が掛かった。

久しぶりに聞く、しかしよく聞き慣れた声だ。

「やっほーシカマル、久しぶり!元気してた?」

どうやら長期任務からいのが戻ったようだ。

シカマルは口の端を上げて振り返った。

「よお、帰ってたのか。長期任務お疲れさん」

目に入ったいのはナース服姿である。

「なんだ、手伝いか?」

いのは力ない笑みを漏らした。

心なしか頬が引きつっている。

「まぁね。医療忍術の修行がてら。さすがに長期任務の翌日はきついわ」

ふうと鼻を鳴らした。

夜中、里に戻ったいのが隊長と共に任務報告に行くと、半分寝ぼけた綱手から、病院での修行兼手伝いを言い渡されたという。

そういや、サワトも長期任務の翌日から任務に駆り出されてたな。

とシカマルが思っていると、いのが軽く眉を寄せる。

「あんたは?誰かの見舞い?」

その口調には憂慮の色が含まれていた。

共通の知人だろうか、容体はどうなのだろうかと心配しているのだろう。

ああ、とシカマルは頷いた。

「サワトのやつ、任務で毒食らったまま無理して動き回ってよ。重症なんだ」

いのが顔をしかめる。

「サワト?」

「ああ。お前も来いよ」

シカマルはいのの返事を待たず病室のドアを開けた。

「ちょっとシカマル…!」

いのが慌てて後ろからついてくる気配がした。





ベッドに横たわるサワトの顔色は、一時期よりは幾分かマシになっていた。

こちらに気がついたサワトに片手を上げて挨拶すると、彼の視線が自分の背後に向いた。

シカマルは身体をずらして空間を開ける。

「昨日長期任務から帰ったんだと。おい、いの、何してんだ?」

いのが入り口で躊躇しているのを見て、首を傾げた。

いのは困惑した表情で近づいてくる。

「行くのはいいけど…その人、誰よ?」



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