14.動き
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シカマルは顎に手を当てる。
「…もしかしたら、異変を印象付けたかったのかもしれません」
「なに?どういうことだ?」
「情報操作の目的は、思考の誘導、内部のかく乱などが考えられます。
思考の誘導は、相手に誤った意識を植え付け、それを利用してこちらの思惑通りに事を運ぼうとするもの。
内部のかく乱は、相手に何らかの情報を与えることにより内部を混乱に陥れようとするものだ。
思考の誘導と考えるには、今回の内容はあまりに不可解で方向性を欠いています。
誘導のされようがない。
となると、内部のかく乱の線が強くなる。
相手はこの異変を見せつけることによって、我々を混乱させ」
言葉を切る。
次が現時点でのシカマルの結論である。
「我々の注意を外に向けたんです」
綱手は眉を顰めた。
「注意を外に向けた?集落の人口が増え始めた時点で既に注意は向いていただろう。なおさら文書を改ざんする意味がないじゃないか」
「人口が増えたというだけでは、あくまで様子見でしょう。劇的な変化があれば別ですが、基本的には定期連絡を待つだけ。意識はしますが注意はしません。もっと強く引き付ける必要があった。だから定期連絡の矛盾というもう一つの要素を加えたんだ」
「…何のために」
「里内から注意を逸らし、その隙に…」
綱手は、何かに思い当ったという表情を浮かべた。
「里に侵入した、そういうことか?」
今、二人の脳裏にはある共通の人物が浮かんでいる。
「突然里に現れたマガナミという少女と鉱山集落の異変には関係があると思うか?」
綱手が静かに聞いた。
そう、マガナミが木ノ葉に現れた時期は、ちょうど暗部からの定期連絡に異変が見られた時期と一致するのだ。
関連を疑わない方が無理というものである。
しかし、シカマルは首をひねった。
「そこの判断がつかないんス。確かに時期はドンピシャだ。けど、だからこそおかしいんスよ」
「おかしい?」
「情報操作をした人間の目的が里への潜入だとしたら、せっかくこっちの目を掻い潜って潜入したってのに、わざわざ目を引くような行動を取ったってことになる。
これじゃ意味ないでしょう。
現にこっちは既に木ノ葉への侵入者を警戒している。
潜入の基本は、当たり前ですが相手にこちらの痕跡を発見されないことです。
そうは言っても、自分がそこに存在する限り、全ての痕跡を消し去ることは不可能だ。
だから、流れてしまうであろうわずかばかりの情報を集約先である上層部や火影が『潜入』と結びつけて考えることのないよう、細工に苦心する。
その一つの手法として、多くの余分な情報を流すというのは有効だ。
パズルはピースが多ければ多いほど形作るのに時間が掛かりますからね。
そうまでして痕跡を消したにもかかわらず、あんな目立つことをするとは考えにくい。
不測の事態だったとも考えられるが、だとするとあまりにお粗末っスね…」
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