生きている意味

14.動き


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シカマルはベッドから身体を起こした。

頭を乱暴に掻きむしる。

今の凝り固まった思考ではダメだ。

一度頭をまっさらにしよう。

脳を休め、情報を整理することで見えてくるものもある。

ゆっくりと自室を出た。

こういう時は、あれだ。

あれ、とは言わずもがな、将棋のことである。

将棋を指していると、心が落ち着き、頭が冴えてくるのだ。

最近では考えをまとめるのに意識的に将棋を利用することもある。

間もなく、パチ、と軽音が響き出した。





しかし、その日は妙案が浮かぶことはなかった。










「さっき鉱山集落から戻った鷹が羽を怪我してたんだった」

「珍しいなぁ。寄り道でもしたかぁ?」










翌日早朝、天啓のように降ってきた言葉でシカマルは飛び起きた。

今のは、火影執務室の廊下ですれ違った暗号部の会話だ。

通信用の鷹が、怪我…。

何故だ。

何故この会話が引っ掛かったのだろうか。

話していた二人は特に気にしているようではなかった。

それに怪我といっても擦り傷程度。

大した問題はないように思える。

しかし、胸の奥で小さな鈴の音がする。

目を閉じてその音のする場所を探った。

大した問題ではない?

本当にそうだろうか。

鈴の音が少し大きくなる。

怪我をしたのは文書を運ぶ通信用の鷹だ。

かなり厳しい訓練を受けているはずである。

そんな鷹が、文書運搬の要である羽に怪我など負うだろうか。



――チリリ――



…ちょっと待てよ。

まさか。

自分の方向性は根本から間違っていたのではないだろうか。





シカマルは弾かれるように走り出した。

確かめなければならないことがある。

民家の屋根を蹴って、五代目の元へ向かった。





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