生きている意味

13.任務


(10/12)


「サワト!」

シカマルは寝かされているサワトに走り寄った。

サワトはシカマルに視線を合わせる。

意識はしっかりしているようだ。

「どうして。あいつがボクを盾にしてる時に仕留めるのが一番確実だったはずだ」

シカマルはため息をついてめんどくさそうに答える。

「お前を助けてヤツを仕留めるには、これが一番確実だった」

サワトはポカンと口を開けた。

「シカマル」

イズモがシカマルを呼んだ。

シカマルはイズモを見やる。

「後は引き受けるから、お前はサワトを木ノ葉へ連れて帰れ」

「わかりました。お願いします」

素早くサワトを背負うと、木ノ葉へ向かって走り出した。








走り出してすぐ、シカマルはサワトに声を掛けた。

「サワト、術解け」

「え?」

「虎翔蜃掌、使ってるんだろ」

「うん。…けど、これ解くとボクかなり重くなっちゃうよ?到着が遅くなるかも」

「バカヤロウ。そんな状態でチャクラ練ってたら毒の回りが早まるだろーが」





虎翔蜃掌とは、サワトの幻術の一つで、自身に対して掛けるものである。

脳に身体が健康な状態だと誤認させることで、負傷しても一時的に健常時と同様に動くことを可能とする。

しかし、決して健康な状態に戻っているわけではないので、あまり負荷をかけすぎると、身体の方が言うことを聞かなくなってしまう。

諸刃の術なのだ。

サワトが途中で動けなくなってしまったのはこのせいである。

身体が限界を迎えてしまったのだ。

今は術のおかげで意識がしっかりしているが、術を解けばサワトの脳は毒のダメージを認識し、とても意識を保っていられる状態ではなくなってしまうだろう。

意識を失っている人間は、かなり重い。

サワトが心配しているのはこのことだ。

しかし、シカマルの言うとおり、このまま術を発動し続けている方が遥かに危険である。





「……わかった」

サワトは素直に頷いた。

「シカマル」

「ん?」

「ありがとう」

サワトの身体が重くなった。

意識を失った彼の横顔は、少し嬉しそうに見えた。





(10/12)

- 92/232 -

[bookmark]



back

[ back to top ]

- ナノ -