生きている意味

13.任務


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陽童はサワトの喉元にクナイをピタリと押し当てた。

「そこの片目。影真似の男を殺せ。さもないと、こいつが死ぬ」

「何!?」

イズモはシカマルを見る。

シカマルは無言のままイズモを見返した。

「そんなこと…」

「やるんだよ」

陽童は喉元のクナイを一層サワトに押し込む。



無言のまま、誰ひとり動かない。



しばらくは彼らの葛藤を楽しんでいた陽童だが、しびれを切らして声を荒げた。

「やれ!」

「先輩、お願いします」

シカマルは静かに口を開いた。

「何言ってるんだ」

サワトが苦しげに呻く。

「いいねいいね、そうこなくっちゃ!」

イズモは小さく頷いた。

「わかった」

シカマルの方に向き直り、クナイを構える。

勢いよく走りだした。

シカマルとの距離を詰め、クナイを振りかざす。

「おーおー!楽しいなぁおい!」

その時、陽童の背後で爆発音がした。

「何だ!?」

陽童が勢いよく振り返ると、大木が倒れ掛かってきていた。

陽童はこれを避けようとするが、身体の自由が利かないサワトを抱えたままでは素早く動くことができない。

「チッ…!」

サワトを投げ捨てた陽童は、寸でのところでその場から飛び退いた。

同時に向きを変えて走り出していたイズモがサワトを救出する。

シカマルは影真似の術を発動していた。

倒れた木の影を利用して、更に自分の影を伸ばす。

陽童の影に迫った。

これで陽童を拘束できれば、形勢逆転、勝負はついたも同然だ。

「クッ…」

陽童ももちろんそれを自覚している。

必死の形相でそれをかわした。

あと数センチで捉えるというところで、陽童は宙に舞い上がった。

影は伸ばせる距離の限界を迎え、それ以上追跡することが出来ない。



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