生きている意味

13.任務


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「はいー、そこまでー」

二人が一瞬目を離した隙に、陽童の姿は消えていた。

そして、サワトが飛ばされた方向から妙に明るい声が響く。

視線を合わせると、倒れたサワトの首筋に、陽童がクナイを突き付けていた。

「サワト!」

二人は表情を険しくする。

イズモは間髪いれずに走り出した。

シカマルは一度、素早く背後を振り返り、すぐに後を追う。

「まいったな、もうか…。おじさん、かなり強いの使ったでしょ…」

サワトが顔だけ上げて陽童を見る。

異常なまでの汗を掻いていた。

様子がおかしい。

一体どうしたというのだ。

「おじさん言うな。お前特殊体質か?全く効いてないのかと思って焦ったぜ」

陽童は楽しげにサワトを見下ろす。

「お前、サワトに何をした」

シカマルは眉間に皺を寄せる。

「間抜けな奴らだ。気付きもしなかったのか。これだよ」

陽童はサワトの襟を掴んで身体を持ち上げ、左肩をクナイで叩いた。

左肩は服が破れ、傷の付いた素肌が見えていた。

傷口はどす黒く変色している。

「毒か…」

最初に背後を襲われた時だ。

一撃くらっていたのか。

気付かなかった。

シカマルは自分の不甲斐なさに苛立つ。

「サワト、動けないのか」

イズモが問いかけた。

「ダメみたいです。……まさかこんなところで…間抜けだな、ボクも…」

サワトが力なく笑う。

「クソ…」

万事休すだ。

二人は息を飲む。

その時、サワトが意外な発言をした。

「何してるの?“ボクが捕まえてるうちに”早く」

満身創痍で陽童にクナイを突き付けられている状態で、サワトはそう言った。

陽童は声を上げて笑う。

「こりゃいい!頭にも毒が回ったか?捕まってるのはお前だろう」

しかし、サワトは真顔で答える。

「どちらでも、同じことさ」

「何?」



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