生きている意味

13.任務


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イズモがその場から姿を消したかと思うと、間もなくゴロツキたちの悲鳴が聞こえてきた。

厳つい身体が折り重なって倒れてゆく。

イズモは手際よく敵を片づけていった。



ほどなくして、全ての残党が地にひれ伏し、動かなくなった。



「やれやれ、終わったか」

シカマルは念のために発動したままだった影真似を解く。

「静風」

それを見たサワトも、一つ印を組んで、術を収めた。

イズモが樹上にいる二人を仰ぎ、表情を緩めて手を振る。

その顔が一瞬にして強張った。



「後ろだ!!」



鋭い声が飛ぶ。

同時に、背後に殺気を感じた。

本能の命じるまま、二人は左右に散る。

耳元で空気が大きくぶれる音がした。

自分たちのいた空間を何かが高速で通過する。

二人はイズモを挟むように降り立った。

「大丈夫か!?」

「はい」

「なんとかぁ」

そう言うサワトの左肩には刃物で切れた傷が走っている。

が、彼は一番左側に位置取っているため、シカマルとイズモは気付かない。

先ほどまでシカマルとサワトがいた木の上には、色黒の男が腰を下ろしていた。

頭は見事な白髪である。

年齢は、一見不祥だ。

「困るよ、オレの食いぶち潰してくれちゃ」

手に持ったクナイをクルクル回して弄ぶ。

「何者だ、あんた」

シカマルが低い声で問いを突き付ける。

横にいるイズモの頬を雫が伝った。

「お前、霧隠れの抜け忍、刈陽童だな」

「刈陽童?」

シカマルは男から目を離さずに聞き返す。

「ああ。以前手配書が回ってきていた。霧隠れの元上忍だ」

「うへぇ、今日の任務、Cランク任務でしょう?綱手様の嘘つきぃ」

サワトが何とも情けない声を漏らした。

「知らなかったんだろうよ。五代目も」

シカマルがため息をつく。

「へぇ、オレも有名になったもんだな」

陽童はくつくつと笑った。

人差し指にかかったクナイが左右に揺れている。

「上忍にまで上り詰めた者が落ちたものだな。こんなところで何をしている。お山の大将ごっこか?」

「そう言うなよ。オレだって色々あって、今ではこうして山奥でささやかに暮らしてるんだ」

陽童の白々しい物言いにイズモは眉を顰める。

「よくもぬけぬけとそんなことが言えるもんだな。大人しくお縄につけ」

陽童は鼻を鳴らして黙殺した。



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