「言うたはずや…お前みたいな奴に燐は渡さへんてな…」燐が視線をあげると、志摩が男の包丁の刃の部分を片手で力いっぱいに握っていたのだ。志摩の指の隙間から次々流れる鮮血は 静かに床に落ちる。痛い筈なのに志摩は男から目を反らそうとしない

「れんぞ…」燐は志摩の手から流れ落ちる血に目を見開いて凝視する。男は志摩の気に圧されて、包丁から手を離すと燐をそのままに 外へと走り逃げていった。包丁を握りしめたままだった志摩はやっと自分が出血しているのに気づいて包丁を地に落とした


「っ…」「廉造……!待って、今手当てする…」燐は脱がされた下着とズボンを急いで履くと、志摩の手当てをするために救急箱を取ってきて、急いで包帯を取り出した。「燐…」「…ごめん…な…俺がもっと気を付けてれば…」涙声で言う燐に…志摩の胸はどうしようもなく締め付けられた。
「燐…」彼は優しい。こんな人間のために泣いてくれるのだから。「燐…俺な、ずっと燐に謝りたかったことがあるんや…」燐は包帯を巻きながら、夜空のような深い青を志摩に向けた。「えっ…」これを話したら、拒絶されるかもしれない。罵倒されるかもしれない。…だがそれでもいい。


「俺…ずっと……燐に…酷いことしとったんや…」燐は首を傾げたまま黙って聞いている。「……俺…燐のことストーカーしとった…。正確には…振りやけど…」ああ、言ってしまった。燐の包帯を巻く手が止まって、志摩は覚悟した。…雨の音が、突き刺さるように痛かった


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