ケータイを開けば、電話の主は―燐。志摩は跳ねるようにベッドから起きて、部屋の椅子に座り、通話ボタンを躊躇せずに押して携帯を耳にあてた。…そして冒頭に戻るというわけだ。志摩は春先のだというのに上着も着ずに夜のどしゃ降りの中へと飛び込んでいった。

携帯なんて部屋に投げ捨てて走った、走った。無我夢中で。雨が服に染み込んで、肌にくっついて、寒い。走り過ぎて肺が痛い、熱い、苦しい。けれど、嫌な予感がした。なぜと問われればそれは答えようがない。感覚的なものだ。胸がざわついて…不安でいっぱいになる…一気に身体が冷える感覚


――…

一方、燐は電話から30分の間布団にくるまって相も変わらず震えながら携帯を握りしめていた。…しかし志摩に電話をして、声を聞いただけでも大分心は先程よりは安定していた。志摩は「待っててや、今行くから」と言い直ぐに電話を切ってしまったけれど。

「廉造…っ」彼の声を口にすれば、それは優しい響きを伴って胸に溶けていくようで。…と、燐しか居ない暗い部屋に、呼び鈴の無機質な音が部屋に反響して、燐はもぞりと布団から出て、玄関に足を向けた。


志摩だろうか、と 布団から出て、玄関に足を向ける燐。裸足でフローリングの床を踏むたびに、ぺた…ぺた…と音が立つ。燐はゆっくりと歩みを進め、ドアノブに手を伸ばした


ガチャ…。開けた瞬間に見えたのは、志摩ではなくて、全く知らない男のにたついた顔で 燐は咄嗟にドアを閉めようとしたが 隙間に足を挟まれ閉めることさえゆるされない。燐の背中を嫌な汗が伝った。

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