悲しみとも、困惑とも、疲れとも言えるようなそんな光を宿した瞳が志摩の鷲色の瞳を見つめた。燐は相当まいっているようだった。それは普段から白磁器の如く白い肌が一層白く、目の下にうっすら描かれた隈が全て物語っていた。


だがおかしい、と志摩は困惑した。確かに自分はストーカーをしていた。しかしそれは後をつけたり 陰から覗くというレベルで、しつこい無言電話や ましてや物を取るなんてそんな行動に走った覚えはない。まさか…本当のストーカーが表れたのか。そう考えが落ち着いた瞬間、身体の芯が冷えていく感覚に襲われた。

「燐くん…君は俺が守ったる。やから…やから大丈夫や」「廉造…っ…」眉根をきゅっと寄せて、燐は水の膜が張った青の瞳を揺らす。刹那一筋の雫が頬を伝い、志摩は驚いて目を丸くするが それとともに、ストーカーに対する怒りがふつふつと沸き上がってきた。
ストーカーをしていた自分が本物のストーカーに怒りを抱くなんてさらさらおかしな話だが、それでも許せなかった。彼を、燐をこんなに苦しませ、精神を追い詰めたストーカーが。そんな、「怖い、怖い…」とうわごとのように呟き震えていた燐の姿は記憶に新しい



――
そして予測はしていたが、ついに最悪の出来事は起こってしまった。…その日は雨の強い日で、窓にせわしなく打ち付ける雨音が五月蝿い日だった。学校も直ぐに終わったため、志摩と燐は途中まで一緒に帰り、後はお互いに別れて帰路についた。


家に帰ってベッドに寝転がった志摩だったが、胸に靄がかかったの如く もやもやが渦巻いて止まなかった。それは外の雨音に押されるように胸中にどんどん広がっていく。ふと、あの不安げな燐の顔が頭を過り、ちらりとケータイに目をやっていたら、…LEDランプが静かに声をあげた。



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