「もしもし…燐…くん?」電話の通話ボタンを押して電話に出るが返答がない。どうしたのかと電話の向こうの相手に神経を集中させる。窓をなぶるように打ち付ける激しい雨に、志摩の心はざわめいて。「…れ…ぞ…助けて…」やっと聞こえた声は雨にかき消されそうなほどか細かった。


「…燐…?」「…怖い…んだ…もう……嫌だよ…」まさか、と座っていた椅子からガタっと立ち上がり、志摩は息を呑んだ。

「…まさか…例のストーカー…かいな…?」数日前から燐は誰かに見られて気がする…と度々志摩に相談をしにきていたのだ。だが、実はそれは燐には言いはしなかったが、燐をストーカーしていたのは、志摩本人であった。ストーカーになりすまし それを退治すれば燐の気を引けると思ったからだ。汚い手だとは思ったけれど、これしか、自分には方法が思い付かなかったから。
…思惑通り燐は誰かに始終見られていると気がする、と学校で仲のいい志摩に相談しに来た。最初は悪戯かな、と言っていた燐も次第に不安を示すようになった。


しかし 日に日に目の色が暗くなっていく燐を見て、志摩はだんだんとストーカーを演じることに酷く心が重くなっていった。志摩はストーカーをすることを止めようと決意した。燐が弱る姿をこれ以上目にしたくは無かった。だが…ストーカーを止めた筈なのに、燐の表情はますます暗くなっていった


燐に話を聞いた志摩は驚きで声が出なかった。金縛りにはあったことはないがおそらくこんな感じなのだろう。身体が硬直して動けなくなる。息をするのも苦。
「最近……学校に居る間によく鞄とかから物が消えるようになったんだ…。無言電話も1日に何回も来て…。前はこんなこと無かったのに…」燐は絞り出すように呟いて唇を噛み締めていた




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -