そんな昼下がり






ある昼下がりの午後の成歩堂なんでも事務所。
王泥喜はすることもないので、暇だなぁだなんて事務所のソファーに腰をおろしながら 六法全書をパラパラとめくり、ぼうっとしながら目を通していた。
みぬきはまだ学校だし、成歩堂はなにやら買い物に出てしまったため実質今事務所には王泥喜しか居ない。


ため息をつきながらページを捲れば、六法全書の乾いた紙擦れの音だけが静かな事務所内にこだまする。


(…暇、だなぁ)


…と、事務所のドアの辺りから カラン…と凛としたベルの音が響いて。


成歩堂が帰ってきたのかと腰をあげてドアに向かった王泥喜は そこにいた人物に 顔に盛大な呆れを示して 本日2度目のため息をついた。


「…が、牙琉検事ですか…」


「ちょっ、なんだいその至極残念そうな顔は!」


その男性…浅黒い肌に 眩い金髪、紫のスーツを違和感なく着こなす端正な顔をしたライバルであり恋人でもある検事、牙琉響也は 拗ねた子供のように ムッとした顔になった。


実は彼は検事という立場だというのに、仕事だと理由をつけてはちょくちょく事務所に足を運んでいたりするのである。
まあ…その度に響也は事務所の隅から成歩堂に冷たい視線を浴びせられているのだが、その理由は王泥喜は未だに分からなかったりする。


「いえ、なんでもありません…。ただ仕事は忙しくないのかなー…と思いまして」


「そんなの、オデコくんに会うために終わらせてきてるさ!…ところでさ」


「はい?」


「今って一人なのかい?やけに静かだけれど」

「え?あぁ、はい。成歩堂さんは今外出してるので」


首を傾げる響也にそう答えると、 彼は「ふぅん」と言いながらソファーまで歩いて行き腰掛けた。


どうやらこの検事は 暫くここに居るみたいである。
王泥喜は取り合えずお茶でも出そうかと急騰室に足を向ける。 すると突如 後ろから腕か伸びてきて抱き込まれた。 いきなりの事に頭の処理が追い付かず後ろに倒れこむ。


「うわぁっ!?ちょっとちょっと牙琉検事!?」


「…二人のとき位、響也って呼んでよ」


「…響、也さん」


「ん、なぁに」


「あの…俺…お茶を…」


「別に法介がいるからいらない」


言われているこちらが恥ずかしくなるような台詞をぬけぬけと口にしながら 響也は王泥喜に回した腕に力を籠めて首筋に顔を埋めてくる。
彼からは 爽やかな、それでいて甘い香水の香りがして、まるで彼みたいだな…なんてぼうっとしていたら 首筋にキスを落とされた。


「!っ…!?」


「…なんか法介甘い匂いがする」


「えっ…」


「…ケーキ、みたいなさ」



(ケーキ…)
そう言われて 王泥喜には思い当たる節があった。


「もしかして、最近お菓子作りしてるからかな…」


お菓子作り。
そう呟いた王泥喜に 響也はぴくりと反応した。


「えっ、お菓子作りって…法介料理とかするのかい!?」


ありえないくらい意外だというような顔をされたため、少しムスッとして王泥喜は響也を睨んだ。


「しますよ一応!!…最近はお菓子作りにはまってまして、たまにみぬきちゃんとか成歩堂さんにあげてたりするんですけど」


「へ…へぇ…」


(なんだよそのその顔!…も、もしかして男がお菓子作りに夢中とか寒い…とか思われたかな…)



微妙な返事を返してきた響也に内心ドキドキしてしまう。
心なしか手のひらが汗ばんできた。
…だがしかし 次の瞬間 後ろから飛んできたのは「羨ましい」という呟きと いつもの無邪気な笑みを浮かべた響也だった。



「…っ…え?」


「羨ましいよ!!僕も法介の手作り料理が食べたいな」


(ええええええ)


驚いた王泥喜と共に頭の癖毛もぴんっと立つ。響也の予想外の返事に驚いたのは確かだが、腕輪が反応していないということは 響也は嘘は言ってないのだろう。
別に腕輪の反応など見なくとも彼の表情と声の明るさからして嘘などないことは明らかなのだが。


「あの…響也、さん」


「なんだい?」


明るく屈託なく笑う彼に思わず心拍数が上昇する。こんな顔をファンの女の子にも見せるのかな…なんて考えたらなんだか柄にもなく妬いてしまったけれど、子供みたいですぐ拗ねたり怒ったり、意外と甘えん坊で繊細で…法廷やバンド以外での彼を知っているのは自分だけなのだと思うと…なにやら嬉しくなって笑みが溢れた。


「…今度の日曜日…もし…空いてたら…、その…俺ん家…来ませんか…?」


「法介…」


「響也さんは…その…料理とか出来なそうですし、その時ついでに教えてあげます…!」


我ながら可愛さの欠片もない誘い方だが、響也は気にしてないのか思い切り抱き締めてきた。


「うんうん!なんでもいいよ!法介ありがとう!!」


「ちょっと…響也さ…苦しいですよっ!」


形ばかりの抵抗は響也の明るい笑い声におされてしまい、王泥喜は観念したように眉根を下げると小さく微笑った。




…―――


「…あーあ、帰ってくるタイミング間違えたかな」


事務所の前でコンビニのビニール袋を片手にさげた成歩堂は、はぁ…とため息をつく。


「…成歩堂?そんなとこでなにをしている」


どうしたものかと考えていると、聞き馴染みのある自分より低めの声が後ろから飛んできて、成歩堂は振り向いた。


「あれ、御剣じゃないか。用があるなら残念だが、今は取り込み中みたいだぞ」


苦笑してやれやれと肩をすくめれば、察したのか、御剣は同じように苦笑し、重々しいため息をつく。


「…はぁ…。牙琉に話があったのだが、それならば仕方がない…。…成歩堂、今時間は」


「空いてるけど、いいのか?急ぎとかなんじゃないの」


「大したことではないからな。後でたっっぷり話をしてやればよいことだ」


大したことではないと言いつつ眉間には皺がよっている上に声が苛立っている。
相変わらず分かりやすい奴だなぁなんて内心呟きながら、小さく響也に合掌した後、踵を返す御剣を追いかけた。


「…ふーん。…で…今日はなんか奢ってくれんの?」


「…ム…。いたしかたあるまい…」


「流石御剣!」



そんな会話など露知らず、響也と王泥喜は事務所でいちゃついていたのであった。
この後の響也については想像にかたくない。














その後日、王泥喜の家で馴れないながら一緒に料理をつくる響也の姿があったとか。










(…わぁああ!響也さん!どんな切り方してるんですか!!)

(なにって…最高イカしてるだろう?)


(…し、仕方ないですね…。ほら、こう切るんです)


(…ぁあ…幸せだ…)


(ちょっと聞いてますか響也さん!)




****************


ツイッタにてリク貰ったんで書いてみた\(^o^)/
お料理するキョオドだったんだがこれなんか違くね?あれ?おかしいな…



続き希望されたら書くかも!リクあざっした!

 

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