I like you





裁判の終わって静まりかえった裁判所で 僕はある人物を探していた。



「…おかしいなぁ。いつもは…この辺りに…」

裁判が終わったらいつも"彼"が居る筈の 裁判所のソファーの辺りにも居なくて、僕からは知らずと重々しいため息がでていた。


(今日はいないのかな…)



特別用はないんだけれど…気づけばあの人を目で追ってる、探してる。
話してるだけで満たされるのに胸が苦しくなる。


この感情は
like、なのだろうか…それとも



「どうした?なにかお探しかい?コネコちゃん」


「!!ごっ…ゴドーさん」


考えに没頭していた僕のところに甘みを含んだバリトンがいきなり後ろから飛んできて、反射的に振り返る。 目の前にいた人物と目がバッチリ合ってしまった。 途端、僕の顔を熱が侵食していく。


「あ、ぃや…あ、えっと…いつもここに座ってるのにゴドーさん居ないなーって…あはは…」


「…」



冷や汗をたらしながら無理矢理笑った僕。けれどゴドーさんは今のそれを聞くといきなり押し黙ってしまった。



(あ、あれ…なんか変なこと言っちゃったかな…)



沈黙が重く感じられて 僕は顔を強張らせて、尚冷や汗をだらだら流す。
…しかし、ゴドーさんはいきなりくつくつ笑い出すと、ゆっくりと己の目を覆うマスクを外し 懐へとしまった。


そして僕に向けられたのは 柔らかい光を灯した色素の薄い双瞼で。

…刹那、己の胸がどきどきと高鳴って、まともに目が合わせられなくなって僕はたまらず俯いてしまう。



「…クッ、あんま可愛いこと言ってると食っちまうぜコネコちゃん?」




いつの間にか近くに来ていた彼が耳元で甘く囁く。




身体中を満たしていく熱とともに 疑問は確信へと変わった。








物凄くベタな言い方かもしれないけれど その時 僕は確かに聞いたんだ。








likeがloveに変わるのを




恋に落ちた 音を。


 

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