I meet you
1、I meet you
今日は日曜日。
事務所から珍しく休みが出た。(まあ…いつも休みみたいなものなのだけど)
王泥喜はせっかくの休みなので家でのんびりしようかとも思ったのだが、たまには外出もいいかな、なんて街にくりだすことにした。
そろそろ衣替えの時期だし、ちょっと服でも買おうかな…なんて思いながら。
――…
目的地に着いた。
駅から降りてショッピングモールに向けて進めていた脚は、突如"あるもの"に止められる。
「 〜♪ 」
ふいに上から降ってきた歌声に宙を仰げば そこには街にとりつけられたでかいビジョンの中で歌う、自分の愛した美しい男性(ひと)の姿。
いつも見ているはずの表情も 瞳も、歌っているときはまるで別人のようにしか見えなくてつい見いってしまう。
実際、王泥喜以外にもわざわざ足を止めて見上げる人が何人かいた。
音楽を全身に感じて悠々と歌うその姿は、まるで 水を得た魚のように生き生きして見えて。
彼にとって音楽はやっぱりなくてはならない大切なものなんだと自分へとひしひし伝わってくる。
(…会いたい…な…)
会いたい。
ふと落ちてきたそんな思いは なんの戸惑いもなく溢れていて。
彼を見ていたら、恋しくなった。
あの優しい体温が…力強い腕が、笑顔が。
いつもは彼のせいで騒がしいのに、今日はまだ黙ったままの携帯に 少しだけ寂しく感じてしまって、ポケットの中のそれをぎゅっと握ってみた。
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