※父の日に書いたもの(^^)後半かしすわ表現注意報。そして国主パパが親バカ















「親父」


満月の美しい夜…。
諏訪ことタケミナカタは国主のいる出雲へとやって来ていた。
幸いまだ彼は起きていて、いつものごとく何らかの書物を社の、月のよく見える場所で読んでいた。


「おや、タケミナカタじゃないか。どうしたんだ、こんな時間に」


国主はそれに気付くと書物から顔を上げて、いつもの笑みと共に出迎えてくれた。
それに妙に安心して、彼の座る隣に腰を下ろす。


「あー、あのさ…?

今日は…父の日。だろ?」


「あ、覚えてたのかい?」


視線を僅かにそらしながらぼそぼそと彼が切り出すと国主は僅かに苦笑した。
それもそのはず。去年は自分の子供にひたすら肩たたきメドレーをされたのだから。
しかも疲れていたとはいえ、せっかくの諏訪からの父の日のプレゼントである肩たたきを拒否してしまったし。


あの後拗ねてしまった諏訪の機嫌を直すのにどれだけ時間がかかったことか。

「ったりめーだろー。

今年も皆に肩たたきされたのかよ親父」


「いやいや、今年は肩たたきじゃなくて物を貰ったよ。沢山ね。



それはそうと、去年はすまなかったね…タケミナカタ。」


「ぇ、いや…去年のことなら親父は謝ってくれたから、別にもう気にしてねぇし…っ。



で、俺も…さ、去年の事とかあったし、やっぱ物がいいかなって思って…」


言うと諏訪は後ろからおずおずと箱を出して、国主に差し出した。



「!タケミナカタ…」


「親父…、


あの、


いつも…ありがとう。
…これ。そんな高いものじゃねーけど…」


少し顔を赤くした諏訪に、国主は自身の頬が緩むのを押さえられなかった。
何千何百と年を重ねても、我が子に感謝の言葉を言われるのはやはり嬉しい物だ。
ありがとうと、そう言われるだけでももう十分過ぎるほど父親としては嬉しい。
もう昼間179人に同じ言葉を言われたが、やはり嬉しいものは嬉しいのだ。


「いいんだよ。気持ちだけでも凄く嬉しいから。


これは…開けていいのかな?」


「ぁ、おう。」


…箱を開けると
そこには大きな瓶が一つあった。


(…これは…お酒?)


きょとんとする国主。
それに諏訪は気付くと、

「あのさ…覚えてるか?



俺、昔約束したろ?
大きくなったらいつか俺が親父に酒持ってきて飲ませてやるよ、って」


「…ぁあ!あの約束か。覚えてるよ」


諏訪がまだ幼かった頃を思いだし、彼は目を細める。


…――




随分昔のこと…。
あの日も今日のような満月の美しい夜だった。


皆が寝静まった夜中、国主が酒を飲んでいた時にふと後ろから視線を感じて振り向くと、
寝た筈の諏訪が眠そうに目を擦りながら此方を見ていた。

『親父ー。なに飲んでんの?』


『おや?まだ起きていたのかいタケミナカタ。

…これはね、お酒だよ』


『酒??おいしーの?』


幼い彼は目をキラキラと輝かせて国主の所にとてとてと歩いてきた。


『んー。子供は美味しいと感じないかもね。苦いし。』


『そっか…
いいなぁ、俺も飲みたかったなー…』


微笑みながら頭を撫でてやると彼は途端にがっかりした表情になった。


『でも大人になったら美味しいって感じるようになるよ、多分ね。
タケミナカタ、大きくなったら、その時は父さんとお酒飲むかい?』


『…!うん!じゃあ俺、大きくなったら親父に酒持ってきて飲ませてやるよ!約束な!』

満面の笑顔で嬉しそうに言って笑う彼を持ち上げて膝の上に乗せ、指切りを交わした。



『よぅし、じゃあ約束だ。


タケミナカタは本当に優しい子だね、ありがとう』



…――





「懐かしいな。
てか、親父もよく覚えてるよな。180人もいるのに。」


「我が子との約束を忘れる訳がないだろう。


何百、何千歳になろうとも、お前も皆も私の可愛い子供なんだからね。」


彼は目を星の瞬く漆黒の空へと移し、尚微笑みながら言った。
彼の言葉の一つ一つには温かみがあり、まるで心に染み込んでくるようで。
自分の母親は父親のこういう所に惹かれたのだろうか…とぼんやりと考えながら、彼の月明かりに照らされた柔らかい色を灯す、精悍な横顔を見詰めた。


「……。

親父には、やっぱ敵わねーや…。」


ふ、と苦笑していると横から大きな手が諏訪の頭をくしゃりと撫でてきた。
それは、幼い頃にしてもらったのと同じで
ふいに懐かしさが込み上げた。


「私こそ、お前には敵わないよ。」


いつまでも子供のように純真で真っ直ぐで…。
それは、自分には無いものだから。


そう思っていたその刹那、諏訪の表情に影がさした。


「俺はー…まだまだだよ。
親父と違って、直ぐに力で解決しようとしちまうし…。
いつも後先考えないで行動しちまう。


兄貴達と違って…いいこじゃないし…。
いつも迷惑掛けて…ごめんな。」


珍しく元気を無くしている息子に、伸ばしたままの手で、また先ほどよりも強く撫でてやった。


「…いいよ、いいこじゃなくても。」


「…ぇ…」


「私はね、いつも真っ直ぐで…素直で元気な…そんなタケミナカタが大好きだよ。



いいこだからとかそうじゃないとか、そうやって父さんは分けたりはしない。」


「親父…」



「子供はね、親に迷惑掛けるのが仕事みたいなものさ。


だから…沢山父さんに迷惑を掛けなさいタケミナカタ。
私はこんな立場だし、もう失敗なんてすることはできないけれど、お前はまだまだ失敗したってやり直せるよ。」


頭を撫でてくれている父親の顔はとても穏やかで、優しい眼差しを向けられるとなんだか照れ臭くなる。
諏訪の頬を、さぁ…っと柔らかな夜風が掠めた。




「…ぅん…」



「……っ…











全く、可愛いなぁタケミナカタは〜。」


「だ、わっ!?止めろよ親父っ」


頭をわしゃわしゃと撫で回された諏訪は照れて赤くなりながら抗議の声を上げた。
それでも国主が平然としているのは、それが本当に怒って抗議をしているわけではないと分かっているからだろう。


何回も頭を撫でられるのは、嬉しいやら恥ずかしいやらひたすらに変な気分だ。
けれども胸の中が温かなもので満たされていくのを、しっかりと感じていた。


「はは、ごめんごめん。



さて…、じゃあ早速このお酒飲ませてもらおうかな。…お前も一緒に飲むだろう?」


訊くと、諏訪は無言で頷いた。


(…やっぱ親父は変わってねえな…。)


何年経っても、彼は昔と変わらず、自分の大好きな優しい父親でいてくれる。





諏訪が目を伏せて もう一度、ありがとう。と静かに言うと国主は照れたように笑ったのだった。























「(…ふふ、嬉しそうですわ。八千矛様…)」


そして、陰でその様子を奴奈川姫は微笑ましそうに眺めていたそうな。

















「(そういえばタケミナカタ、最近鹿島とはどうなんだい?)」


「(!!ゲホッ!!?なんで鹿島の名前が出てくんだよっ)」


「(いや、仲良くしてるのかなって。もしなにかされたら父さんに言うんだよ。呪いの一つでもかけてあげるからね。)」


「(!!?ぇ…えーと、いや、だ…大丈夫!大丈夫だからさ、心配すんなって!)」


「(うん、ならいいけど。)」


「(……。はぁ…こーゆーとこも相変わらずだな…)」


「(何か言ったかい?)」


「(い、いや別に!)」









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国主パパのキャラ掴めない\(^o^)/
この親子が大好きです!!



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