夕刻。


「…ふぅ」


今日の夕飯担当であるガイアは、調理場にて調理をせっせとこなしていた。
今日の料理担当はソワレ、デジェルとだったのだが、あの二人に任せたら軍の人々の生命に関わる。とガイアは二人には別の仕事を頼んで料理は自分が回ることにしたのだ。


「…えーと…塩は、と」


「ガイア。頼まれていた野菜の皮剥きが終わったから持ってきたぞ」

…ガイアが下味の作業にかかった所で、声と共に調理場にロンクーが入ってきた。
彼の持つ篭の中には綺麗に皮が剥かれた野菜が。



「お、流石早いなロンクー。ありがとう、そこに置いててくれるか?」


ガイアは一度後ろを向いてロンクーを一瞥すると、また作業の続きに戻った。


「…あぁ」



野菜の入った篭を置いたロンクーは、何故かじーっ…と料理をするガイアの後ろ姿を眺め始める。


ガイアは調理に集中しているのか、それに気付く気配はない。
警戒心の強い彼には全く珍しいことだ。




(…よし)

ロンクーは周りに人が居ないか細かく確認した後、静かにガイアに近付くと いきなり彼の身体を後ろから優しく抱き締めた。


「…ッッ!?

ちょっ…ロンクー…!いきなり何すんだよ、危ないだろっ」


突然抱き締められたガイアは、当然驚いて肩をびくりと揺らす。
しかしロンクーはしれっとした顔をしたまま離れようとはしない。

ロンクーもガイアが本気で怒っていないことが分かっているためか、ますます抱き締める腕に力を込める。


「……少しぐらいいいだろう?


ガイアが足りないんだ…。頼む、少しだけ…」


ガイアの逃げ場を無くして
耳元に唇を寄せて甘く囁けば、あっという間に彼は耳まで真っ赤にして俯く。

これはガイアと付き合うようになってから知った、彼の弱点だった。



「…っぅ……。


しかた、ないな。
少しだけ…だぞ?」



ここまでされて流石に観念したらしい。
ガイアは自分に回されたロンクーの腕にそっと触れて 此方を向くように促した。


待っていたとばかりに合図に応えて肩口から顔を出したロンクーに、ガイアは唇をゆっくり重ねる。

するとすぐに口内にするりとロンクーの舌が入ってきて、ガイアはぴくりと反応した。


「ん…ッ、は…ん」


「ガイア…っん…」


じゃれあうような初めの口付けは、段々と激しいものへと変わっていく。


ロンクーがわざと水音を出して口付けるだけで、ガイアは切なげに眉根を寄せて、白い頬を更に真っ赤に染める。
快感に震える杏子色の睫毛の、なんと扇情的なことか。


恋人のそんな可愛いらしい反応を目の前にして、我慢しろだなんていうのが難しい。


ロンクーも所謂健全な男なわけで。自制していた筈の理性の壁なんてものは、誘惑を前にすればいとも簡単にぐらつく。



――ガイアを今すぐにでも抱きたい。


けれど、ここで欲に流されてはいけない事ぐらいはロンクーもわきまえている。
なんとか理性を総動員し、自分を押さえつけた。



「ぁ…んっ…んん…っは…」



ガイアの口内を隅々まで味わうと、上顎をペロリと舐め上げて舌をちゅるり、と吸って唇を離してやった。
名残惜しげに銀の糸が引き、ぷつりと途切れる。


ガイアはすっかり力が抜けてしまったようで、ロンクーに寄り掛かって息継ぎを繰り返していた。



その様子を見下ろしていると、彼のよもぎ色の瞳とが合う。…すると次の瞬間、ロンクーはキッと睨まれてしまった。


「…っ、おい…少しだけって言ったじゃねえかっ…」


「…?少し、だったろう」


「〜っ…たくもう!


はいはい、約束通りもうおしまいな!


ほら、ロンクー。もう少しで出来るからあっちで待ってろよ。今日はお前の好きな野菜の煮込みだぞ」




「む…わかった」


やんわり身体を引き離されて若干不服だと言いたげな顔になったロンクーだったが、次にガイアに向けられた言葉に 一変することになる。




「……。


あのさ、ロンクー。



…この続きは……皆が寝てから、な?」



また俯いて、少し照れたようにどもりながら言ってきたガイアに一瞬ロンクーは目を丸くし、そして思わず緩みそうになる口元を手で押さえた。


「!…ガイア、それはつまり今夜俺と」


「だぁあっ!分かってるなら…い…いちいち確認するなバカっ」



ロンクーが最後まで言い終える前に、ガイアにかき消されてしまった。



だって仕方ないだろう。
こんな可愛いことをガイアに言われたら、もう一度確認したくもなる。


「っ、ふふ…。すまない。…では、俺は戻っていよう」



いつも冷静なガイアがいちいちムキになる姿に、ついつい笑みが溢れてしまう。
しかもそんな彼を知っているのが自分だけなのだと思うと尚更だった。




「…うー、くそっ。
早く行けよバカロンクー」


「分かった分かった」







――あぁ、早くまたガイアに触れたい。
今夜が楽しみだ。



そう一人ニヤニヤしながらロンクーは調理場を後にしたのだった。









…―――

因みにそれは、たまたま通りかかったグレゴに目撃されていた。



「くぅっ…。イチャついてくれるじゃねぇの。妬けちまうぜ…」


「グレゴ、焼けちゃうの!?」


「!?うわ、ノノ!いつの間に…。


つうか俺は焼けねえって!!」


「えっほんと?


よかったぁ…ノノ心配したっ…」


ギュッ


「あー…っ、大丈夫だ!!俺はノノを置いて死んだりしねえよ絶対」


「うん…グレゴ大好き…!」


「…はぁ。


イチャつくなら外でやってほしいのです」



そして親のイチャつきをうんざりしたように眺めてため息をつくンンであった。











余談だが

翌日、ロンクーが何故か上機嫌で、イーリス軍では彼の話題でもちきりになったらしい。
そしてそれを聞いて一人赤面するガイアの姿があったとか。














*****************

ただ単にラブラブチュッチュする二人が書きたかっただけでした…というね!


ロンクーは隙があれば手を繋いだりキス求めてそうなイメージがあるんですすみません(^o^)
グレゴおじさんは二人の関係知ってそうですよね、みたいな
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