どうも。夕姫の弟です。今俺は姉ちゃんと、遊びに来ている亮兄ちゃんのために部屋にジュースを持って行ってあげてるところ。できた弟だろ?
「ほら、持ってきたぞージュース」
「あー、そこ置いといて」
「お、サンキューな」
俺は姉ちゃんの部屋に居座って自分の分のジュースを飲む。それにしても……、
「わ、ちょ!なんで!」
「………」
「ふぁっ!やばいやばい!」
「………」
なんで姉ちゃんらって同じ部屋にいるのに別のことしてんの?姉ちゃんはたぶん亮兄ちゃんに借りたであろうゲームをひとり一生懸命やってるし、亮兄ちゃんは亮兄ちゃんで漫画雑誌読んでるし。いつも思ってたけど、自由過ぎない?
「ねえ、亮ー助けてーここ何回やっても負けるんだけどー」
「んー……」
「ねえってばー」
「……今すげーいいとこなんだけど」
「そこをなんとか!早くここクリアしたいの!」
「ったく、しゃあねーな……」
亮兄ちゃんはその辺に置いてあった定規をしおり代わりに漫画雑誌に挟んで、もそもそと姉ちゃんの隣に移動した。そしてコントローラーを手に持ち、姉ちゃんに教えながらゲームを進めている。
どうしてこれで付き合ってないんだろう。確かに姉ちゃんたち(俺も含むけど)は幼い頃から仲良しで、恋人同士というよりもきょうだいって方がしっくりくるんだろうけど、でももう二人とも中学3年だぞ?大抵の男女の幼なじみってお互いに意識しちゃって話せなくなるんじゃないの?こんなにしょっちゅう遊んだりしないんじゃないの?まあ、こんなの姉ちゃんの漫画情報だけども。
「わー!さっすがーありがとー!」
「ん、」
「は?何よその手は」
「やってやったろ。報酬」
「あなたにあげるものなど何もないですー。…あ、せんべいあるわ、ハイ」
「お、せんべいか」
「湿ってるけど」
「………」
「痛っ!!食べ物粗末にしちゃいけないんだよー!」
姉ちゃんの頭にせんべいをヒットさせた亮兄ちゃんは無言でもそもそとこちらに戻ってきた。そして漫画雑誌を手に取りそのまま姉ちゃんのベッドへダイブした。
「ちょ!勝手に人のベッドにダイブしないでよ!干したばっかりなのにー!」
「おー」
「……ったく、別にいいけど」
その言葉を最後にまた姉ちゃんはゲームに集中し出して、亮兄ちゃんも漫画雑誌に集中し出した。てか、いいのかよ。
ズズー……。
「……あ、飲み終わっちゃった」
空っぽになったグラスを見る。なんで俺しか飲んでないんだよ。せっかく持ってきてやったんだから二人とも飲めよ。
「あーなんかアイス食べたくなってきたー」
「あー俺もー」
「……」
「二人ともこっち見るな」
「冗談だってー亮アイス買いに行こーよー」
「おー、行くかー」
よいしょと二人は同時に立ち上がる。亮兄ちゃんがおまえは何食べたい?って聞いてくれたから俺はスーパーカップのバニラと答えておいた。
「んじゃちょっと行ってくるから留守番よろしくねー」
「いってらー」
二人仲良く家を出てってしまった。なんだよ、本当いい加減付き合ってしまえばいいのに。亮兄ちゃんなら俺、大歓迎なんだけどな。
それから少しして二人は帰ってきた。(俺ん家はコンビニから結構近くて便利なんだ、いいだろ)二人ともパピコを口にしている。どうやら半分こしたんだろう。
「ただいまー!」
「……おかえり」
「ほらよ!お前の分」
俺は亮兄ちゃんからアイスの入った袋を受け取る。暑い暑いと言いながら玄関で適当に靴を脱いだ二人は、クーラーのかかった涼しい姉ちゃんの部屋へと向かう。そこへ俺が一言。
「ねえ、二人とも付き合っちゃえば?」
そして返ってきた言葉が……、
「んー、そのうちねー」
「あー、そのうちなー」
「………」
うん、もう結婚すればいいと思う。