私はある日、すごいものを見つけた。 いや、すごい人を見つけた。 01.出会い 私は毎日電車で学校に通っているけれど、こんな人初めて見た。私はそれに目を奪われていた。 綺麗な明るいオレンジ色のかみ。 その人は口を開いた。 「ねえ、俺に何か付いてる?」 私は、はっと我にかえった。あまりにも綺麗な髪だったから見入ってしまっていたのだ。目の前の本人は、ん?と首を傾げて私を見ている。 「えっと、何も……」 「…あーっ!!!わかった、俺に見とれてたんでしょ!」 「え、…あの」 確かに見とれてました!けれどそれはオレンジ色の髪にであって、あなた自身に見とれていた訳ではない……はず。私が困っていると、オレンジ髪の人の隣にいる黒い髪の人が言った。 「やめてやれよ、千石。彼女困ってるじゃないか」 その人はオレンジ髪の人を『せんごく』と呼んだ。 「…せんご、く…」 私は思わず彼の名前を口に出していた。しまった、と思い、さっと右手で口を隠した。すると彼は、にこにこ顔で私を見た。 「こんな可愛い子が俺の名前を知ってるとは……俺ってラッキー☆」 「そんな訳ないだろっ。さっき俺がおまえの名前を呼んだからでだな…」 「別にそんな細かいこと気にしなくていいんだよー!ほんっと、地味'sの南ちゃんなんだから〜」 地味'sのみなみちゃん?何だそれ?まあ、見た感じせんごくって人と比べたら地味かもしれないけれど…、てゆーかこの人と比べたら大抵の人が地味に見えるんじゃないかな。 「ったく、その呼び方はいつもやめろって言ってるだろ」 みなみって人はせんごくさんにぶつぶつと文句を言っている。でもせんごくさんはそれを適当に流しているみたい。だからさっきから少し気になっていたことを聞いてみた。 「あの…、地味'sってことはもうひとりいるんですか?」 …まずいことを聞いてしまったみたい。みなみさんは顔を手で押さえてため息をつき、せんごくさんは……、なんだかにやにやしている。私の質問にはせんごくさんが笑顔で答えてくれた。 「君、良いところに気が付いたね!実は俺ら山吹中のテニス部なんだ。それでね、南は東方って奴とダブルス組んでんの。そのダブルス名が地味'sってわけ」 「ちょ、だからやめろって!この子が誤解するだろ?えっと、俺には派手な技がいくつもあって」 みなみさんが説明しようとすると、せんごくさんがわっと口を挟んだ。 「おおーっと!!もう降りなきゃいけないよ〜南ぃ!」 「は、話の途中…」 「じゃあね、かわい子ちゃん♪また会おうね〜」 せんごくさんは電車を降りる間際に名前をちゃんと教えてくれた。『千石清純』だって。清く正しいの『清』に純粋の『純』という説明には少し笑ってしまった。悪いけれど、そんな気がしなかったんだもん。髪の色オレンジだしね。 みなみって人は『南健太郎』だと教えてくれた。南さんが私に名前を教えてくれた瞬間、千石さんは、名前も地味でごめんねー!と私に言って南さんをまた怒らせていた。なんかこういうのって微笑ましいな、なんて思ったり。 電車通学が久しぶりに楽しかったなあ。今度会えたら、私の名前もちゃんと紹介しよっと。 また会いたいなー、そう思いながらぐぐっと背伸びをして私は電車を降りた。 |