しとしと降る雨は、私を憂鬱な気分にさせてくれている。そして隣の彼も、バンジージャンプができないだのテニスができないだのでだらだらとしている。保護者のような役割をしている忍足くんも今日は一緒に帰らないらしく、本当にだらだらと教室に残っている。いるのは私と彼、向日岳人くんだけ。
 彼はしばらく教室の中を暴れていたが、また席に座り落ち着く。彼は何がしたいのだろうと顔を合わせてみると意外にも目が合ってしまった。そらせずに彼を見つめてしまう。

「なぁ、今日日直?」
「あ、うん」
「二人じゃねーの?」
「もう一人いないみたいでさ…まぁ急な雨で早く帰りたかったんだろうけど」

 と、向日くんと話したのは実は初めてである。隣の席といっても私と向日くんは全くと言っていいほど違うグループに属しているために話す機会がないのだ。時々友達にからかわれながらもじゃれあっている彼に、友達と恋について話しながらくすくすと笑っている私達は接点がなかった。

「日直ってだりーよな。俺もうすぐだからその日学校サボろっかなって思うくらい」
「ダメだよ?ちゃんとしないと迷惑がかかる」
「そうだよなぁ…」

 案外納得してくれたことに私は少々驚きつつそうだよ、と頷く。彼は手伝ってやろうか?なんて尋ねるけど、ほとんど仕事が終わったといって彼の申し出を断る。すると彼は少し悲しそうな顔でそうか、と頷いた。

「雨、だな」
「雨だね」
「急に降ってきやがって…俺傘持ってないのに」
「降水確率昼から70%だったのに?」
「俺は残りの30%にかけてたの!」

 それでも持ってこない彼は、そうとうな頑固者なのだろう。たしか少しクラスの人と言い合いをしているところを見たこともあった。だから今日も傘を持ってこなかったのだろうか。雨はやむ気配が一向にないし、このまま学校にいても同じだと思う。

「なぁ…傘ねぇの?」
「私一本しかないから…」
「その一本!」

 彼は、私に濡れて帰れと言っているのだろうか。は?と尋ねると、彼はにっこりと笑っていれてくれ!という。つまり、傘がないから相合傘をしてくれということだろう。なぜ私なのだろう、罰ゲームなのだろうか、そう思って見てみても、彼の笑顔は無邪気でそんなたくらみもないように思える。では、どうしてだろうか。

「俺、お前と一緒に帰りたいの!一緒に帰らねぇ?」
「え!?」
「お前と、友達になりたいの!好きだから!」

 その好きというのがどういう意味なのかわからないが、どうしても私は顔を赤くしてしまう。彼も顔を赤くしているのだからきっとそんな意味なのだろう。私はこくり、と頷いて、早く帰るために日直の仕事を終わらせようとするのだった。






雨降り空の下で
(好き、と言われてしまいました)



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