テニスとは実に興味深いスポーツである。ただボールを打ち合っているだけでなく、回転やコースやその他たくさんのことを十分考えて、打つ。そしてそれが未来に繋がる。それに体力や力がいる。そんなスポーツを私の彼氏は一生懸命している。遊べない日は多いけど、彼の姿を見れるだけで十分なのだ。
そして今日は、彼氏である宍戸亮の練習を見ている。壁打ちをしているだけなんだけど、跳ね返ってくるボールが複雑な回転になっていて、見ているだけでも面白い。
彼はその壁打ちを無理矢理終わらせてベンチにいる私の隣に座る。タオルを渡してあげれば、サンキューと汗をおおざっぱに拭いた。スポーツに燃えているよ、という少年らしいな。
「わりぃな、いっつもこんな練習で」
別にいいよと首を振る。いつもテニスばかりで悪い、なんて詫びてくるが、テニスを含めて宍戸亮は宍戸亮なのだから。彼にいうなんて照れ臭いから言わないが、私は彼を見ていて満足なのだ。
「でもよ…」
「宍戸くんは、テニス楽しい?」
「おう!」
「ならいいよ、そんな宍戸くんを見るのも楽しいから」
そう私が言えば顔を赤くして照れた。宍戸くんって純情だよね、という話を友達としていたけど、まったくその通りだと思う。苦手なのが恥ずかしいポエムだという噂は本当かもしれない。こんなに男らしいのに可愛いな。
「そうだ瑠依!」
「ん?」
「お前テニスできるか?」
「うーん…軟式ならできる」
私は一応軟式テニス部でエンジョイしていたため、力を加減さえすればテニスはできる。だけど宍戸くんの練習相手には全然及ばないだろう。なのに次に出た言葉は、少し練習相手になってくんねーかという宍戸くんらしい言葉だった。
「下手だよ?」
「大丈夫だろ」
「続かないよ?」
「頑張ろうぜ!」
宍戸くんって私に対してこんなに積極的だったかなと少し疑問を持ちながらも、押された私はラケットを貸してもらいコートに入った。
「緩く打つからな!」
「はーい!」
サーブもアンダーサーブ、見ている時よりも球速は遅くて打ちやすい。ラリーは私が思っていた以上にスムーズに続いているのだ。今の所、ミスはない。時々コースがずれたりはするが、彼の脚力で繋いでもらっている。やっぱり宍戸くんはテニスが上手だ。そして相手に合わせるのも上手。
「うまいじゃねーか!」
「宍戸くんが上手なんだよ」
しばらく打った後の休憩。久しぶりにテニスをしたからきっと明日は筋肉痛で、痛い痛いと言うのだろう。それにしても体力が落ちている。こんな短時間で疲れるとは思わなかった。心配してくれる宍戸くんに、やっぱり運動してなかったらきついよね、と笑いかければ彼は噴き出して笑った。
「なんで笑うの!?」
「わりぃ…!お前最高!」
「は?」
「こんなに必死になるやつだと思わなかったぜ!必死になった時の…顔…!」
「…酷かったわけね。どーせ私は可愛さのカケラもないよーだ」
そんなに酷いなら見てみたいものだ。少し怒ったように頬を膨らませてみれば、また宍戸くんは笑う。そんなに崩れているのだろうか、初めて顔に関して笑われた気がする。変顔も面白くないって言われたし。
「ちげーよ!お前可愛いなーってこと」
「は?」
「またテニスしようぜ!」
彼はさらりと私を褒めたあと、コートに戻った。顔を赤くして口をぱくぱくさせてる私なんて見えないのだろう。ああ、私はどうしようもなく宍戸亮が好きなんだなとわかった。
青春ごっこを楽しもう
(そんな彼が一番カッコイイ)