「ツーナくんっ」

「ん?どうかした?」

「えへへ」

「…なんだよ、気持ち悪いな」


最近席が近くなって、よくしゃべるようになった小林紗優。フツーに気の合う女友達で。
俺の好きな人が京子ちゃんだってことも知ってる。まあ話すきっかけになったのがそれなんだけど。
だから協力、ということはないけど話を聞いてもらうってことはある。大抵は小林の無理矢理だけどね。
小林はイス借りまーすと言って、俺の前の席に座った。そして俺を見て首を傾げた。


「ねえ、どうして京子ちゃんが好きなの?」

「…え」

「これは聞いたことなかったよね。ね、どうして?」

「な、なんでそんなことおまえに言わなくちゃいけないんだよ」

「やっぱり可愛いから?」

「聞いてんのかっ!?」

「……」


…勝手な奴だな。質問責めかと思ったら急に黙る。


「ねえ、」

「…今度は何?」

「私じゃ、だめ?」

「何が」

「私を好きにはなってくれないの?」

「……は」


な、何なのほんとに。俺は京子ちゃんが好きだって、知ってるじゃん。え、てゆーか小林、俺のこと好きなの!?意味わかんねーっ!や、でも俺が京子ちゃんを好きだってことには変わらないんだし。……こんなこと言われたの初めてだから参るな。


「俺はね、京子ちゃんが好きなわけで…」

「そんなの知ってる。ツナくんが京子ちゃんと結婚したいんだってことも知ってる」

「えっ!?」

「でもどうしようもないの。ツナくんが好きって気持ち、消えないんだもん」


今にも泣き出しそうな顔の小林。俺はどうすればいいの。俺が好きなのは京子ちゃんだよね。じゃあなんで心臓が痛いんだろう。


「あの、俺」

「…ごめんっ。馬鹿なこと言った。今のは全部忘れて!私は今まで通り京子ちゃんとのこと、応援しまーすっ」

「……」


小林はぐっと顔を引き締め、何もなかったかのように振る舞う。でも、そんなのずるくないか。相手の気持ちを知ってしまった以上、今まで通り接するなんて俺には出来ない。そんなに器用じゃないし、そんなに大人じゃない。


「それじゃ、私そろそろ帰るね」

「え、ああ…うん」

「ばいばい」


そう言って静かに手を振り、俺に背を向けた小林はやっぱりいつもとは違った。そんな態度だったら俺、どうしたらいいわけ?…って人に文句ばっかり言うけど、俺も俺だ。今、小林を追いかけたいと思ってたりする。


「あーあ、ほんと俺ってだめだめなのかも」



優柔不断な俺
(でも今はまだいっか)



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