「ねえねえ、獄寺」
「……」
「ねえってば」
「……」
「ごーくーでーらー」
「うっせー!無視してんだよっ!わかんねえのか」
「……」
「なっ、何で黙るんだよ」
「……」
「あー、もう分かった。聞きゃいいんだろ?何だよ」
「わーい。あのね」
「…ちっ」
獄寺はいろんな人から恐れられてる。まあ女の子の間ではファンクラブがあるとかないとか。そんなのはさておき、不良少年(っぽい)獄寺だけど、本当は優しい。今だって私の話を聞いてくれようとしてる。半ば私の無理矢理みたいな感じがするかもしれないけど、それでも話を聞いてくれるんだもん。優しいんだ。
「もしもの話なんだけどね」
「くだらねー」
「ちょ、聞いてくれるんでしょ!?」
「はいはい、それで?」
「もしも、沢田君がさ、急にいなくなっちゃったらどうする?」
「はあ?10代目がいなくなるわけねえだろ!」
ばんっ、と机を叩く獄寺。机の上にあった鉛筆がころころと転がって、落ちそうになったところを私が止めた。沢田君のことになるとすぐ向きになるんだよね。
「もしもだよ、も・し・も」
「探しに行くに決まってるじゃねーか。くだらねーこと聞くな」
「じゃあ、私なら?私がいなくなったら?」
「気がつかねーな」
「え!?それひどくない?気がつかないってひどくない!?」
それに比べて私の扱いといったら。まあ、いいんだけどね。こうやって話せるだけで楽しいし。
「じゃあ、もし沢田君の右腕になれるとしたらどうする?」
「なれるとしたら、じゃねーよ!なるんだよっ」
今度は机をばんっ、と叩いて立ち上がった。鉛筆はころころと私の前を転がって落ちた。ちなみに消しゴムも落ちた。いや、飛んでいった。
「俺は必ず10代目の右腕になって10代目を命に代えてもお守りするんだ!…あいつには負けねえ」
な、なんか燃えてらっしゃる。『あいつ』ってきっと山本君なんだろうな。
「ねえ」
「あ?」
「次で最後ね。もし、私が」
「…?」
「獄寺のお嫁さんにしてって言ったら?」
君が答えを出すまであと3秒
「…仕方ねえから、もらってやる」
「え…、本当!?」
「もしもだろっ。もしも」
そう言った君の頬は柔らかな桃色だった。