ザーーッッッッ
｢な、なんでーーーっ！？｣
私が日誌を書き終え、帰ろうとしていた直前に…大雨。こんな、ああ…、最悪。
｢天気予報全然だめじゃん｣
傘、持ってきてないのに。…日誌さえなければこんな目に遭わなかったのにさ。
周りを見回しても誰もいない。あーどうしよう、雨止むの待つしかないかな…。
｢よう、小林じゃねーか。何やってんだよ｣
｢宍戸ーー！雨降ってんの！雨｣
｢知ってる｣
｢天気予報最近当てになんないよね｣
｢だなー。俺今日傘忘れたし｣
そう言う宍戸だけれど、右手には立派な傘が握られている。…？Why？
｢宍戸、傘持ってるじゃん｣
｢ああ、これ。職員室で借りた｣
｢あ！その手があった！｣
私が職員室へ向かおうとすると、宍戸はあー、と間延びした声を出した。
｢…わりィ。俺で最後…｣
｢な、なんですと！？｣
な、なんて今日はついてない日なの！？私は盛大なため息をついて、壁にもたれ掛かった。この雨、絶対すぐに止まないよ。
私が落ち込んでいると、宍戸はん、と私にさっきの傘を押し付けてきた。
｢え…？｣
｢それ、おまえに譲るから、それで帰れよ｣
｢え、でも宍戸はどうするの｣
｢俺はそのまま走って帰る｣
宍戸はそう言うと、すぐに戦闘態勢にはいった。や、ただテニスのジャージ被って走る準備してるだけだけど。
｢ちょちょちょちょっと待って｣
｢ああ？｣
｢そんなの悪いよ。もし宍戸が風邪でも引いたら｣
｢こんなもんで風邪引く程ヤワじゃねえし｣
｢いや、結構な雨だけど｣
｢だから大丈夫だって｣
｢だ、だめだってば。…それにこの傘借りたの宍戸じゃん。返すのだって宍戸じゃないと｣
｢明日俺んとこ持ってきてくれれば返しとくから、いいぜ｣
宍戸は爽やかに笑って私の攻撃をかわす。私は宍戸と帰りたいんだよっ。こんなチャンス滅多にないのに、気付けばか。私と相合い傘しろー！
｢じゃあな｣
｢待ってよっ｣
｢んだよ…｣
呆れてらっしゃるー。でもね、宍戸が悪いんだよ。鈍いんだよ。だから私が代わりに言うもん、いいもん。
｢一緒に、帰って…よ｣
｢は…一緒に帰るも何も傘一本しかないん…だ、ぜ…｣
気付いた。やっと気付いた。語尾がおかしくなって、それから顔が少し赤くなってる。それを見てると、こっちまで恥ずかしくなってくる。
｢お、俺、今すげー走りてえんだ。だからおまえがそれひとりで使っていいぜ、な！｣
｢…宍戸、私と入るの嫌なの？｣
｢え、いや｣
｢じゃあいいもん。雨止むの待つ。傘返す｣
せっかく、せっかく頑張って言ったのに流すのかよ、ばか。こんな私でも勇気いったんだぞ。あーあ、恥ずかしい、私馬鹿みたい。
｢っ、だから、……逆なんだよ｣
｢……｣
｢おまえが嫌とか、そんなんじゃねえ｣
｢……｣
｢おまえが、好きだから。近くだと…き、緊張すんだよ……｣
｢し、ししど……｣
可愛すぎるその表情に
(大好き宍戸っ！)(ばっ、馬鹿、くっつくな！)
その後的な？→