「対面」






 トントン


 その日の夕方、扉が突然ノックされた。
 扉を開くと、そこにはクロウが立っていた。



「おう、今大丈夫か?」



 遊星が頷くのを確認すると、クロウはニッコリ笑った。



「食堂来いよ。お前の歓迎会やるからさ」



 歓迎会と聞き、漸く自分が屋敷の一員になるんだと実感した。
















 食堂につくと、真っ先に十代が掛け寄ってきた。



「来た来た!待ってたぜ遊星ー!」



 手には、カゴ一杯のクッキーが。どことなく今さっき作ったという手作り感がある。
 十代に勧められるがまま、そのクッキーを口にした。



「……美味しい」


 
 クッキーは作り立てで、ほんのり暖かかったがサクサクとしてて美味しかった。その辺のお菓子屋さんに売ってある物と大差ない。



「本当か?おーい、鬼柳!美味しいってよ!」



 十代が、一人の人物の腕を引いてきた。
 鬼柳という人物は、髪の毛は綺麗な水色で、十代よりも少し背が高い男性だった。

 遊星が軽く挨拶すると、すぐに視線をそらしてキッチンの方へ歩いて行ってしまった。
 何か気を悪くするようなことをしてしまったのだろうかと不安になったが、すぐにクロウが訂正した。



「あー、気を悪くすんなよ?あいつ、極度の対人恐怖症なんだよ」



「対人恐怖症…?」



「そ。初めましての奴にはまともに喋れないし、言葉が出なくなっちまう。でもまあ、すぐに遊星にも喋るようになると思うぜ?あいつ屋敷の住民に対しては順応性が早いからな」



 一見普通に見えたが、対人恐怖症とは思わなかった。
 やはり、人には言えないことがあるのだろう。この場所はそういう場所だと、両親から聞いていた。

 鬼柳が引っ込んで行ったキッチンを見つめていると、遊戯から声を掛けられた。



「遊星ちゃん、僕の弟紹介するよ。アテムって言うんだ」



「君が遊星だな、相棒から聞いてるぜ?俺はアテム、宜しくな」



「あ、宜しくお願いします」



 双子というだけそっくりだ。
 ただ、兄の遊戯と違って弟のアテムは凛々しい顔つきだ。中身も少々違いはあるようで、なんだか不思議な感じがする。



「で、こいつがジャックな」



 クロウが連れて来たのは、金髪で長身のモデルのような男性。
 屋敷の中では、美形さが一際目立っている。
 ジャックは遊星を見、淡々と自己紹介をした。



「……ジャック・アトラスだ。一応、小説家だ」



「…不動遊星です、宜しくお願いします」



「俺の事はジャックでいい。隣人がクロウで気の毒だな」



「どういう意味だ」



 なにやら二人の雰囲気が只ならぬ感じだ。仲でも悪いのかと思ったが、喧嘩するほど仲が良いと言う。
 これでも一応は仲が良いのだろう。

 この屋敷の住民は皆個性が激しいな、と密かに思った。

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