「印象」







 屋敷に新しい住人が来た。
 今度は大人しそうな女の子。扉を開けたらそこに立っていた。
 特徴のある黒の髪形。シックな服装で、手には手帳が。

 どうやら、管理人に屋敷の案内を任されてしまったようだ。
 ずっと廊下に立たせたままというわけにもいかない、その女の子を部屋に招き入れた。

 女の子はずっと俯いていた。
 初めての場所、初めての環境。不慣れゆえの不安が彼女に圧し掛かっているのだろうか。
 俺は緊張をほぐそうと、軽く自己紹介をした。
 彼女は俺を見て、真っ直ぐ自己紹介をした。不安そうな目をしている。
 彼女は“遊星”と言った。女の子にしては珍しい名前だ。

 まずは、緊張ほぐしがてら、世間話でも交えながら屋敷の規則を教えた。





 大体の屋敷の案内を済ませると、遊星は一人で部屋の方に戻ろうとした。
 ちゃんと部屋まで帰れるのかと声を掛けると、少し考えた仕草を見せると、途端に俯いた。どうやら分からないようだ。

 仕方ないと、軽くため息をついて、彼女を元来た道へ案内した。





「そういえば…何歳?」




「……19歳」




 近い歳だったようで、俺が笑いながら「俺が一つ上だな!」と言うと、遊星は柔らかい笑みを浮かべてくれた。
 



「どこの大学?新入生?」




「ネオドミノ大学に…今度入学で…」




「ってことは、俺の後輩かー!あの大学は色々と面白いぜ」





 どうやら大学も同じらしい。同じ寮に同じ大学の子が入居するというのは何か運命のようなものを感じる。
 遊星の緊張が解けるよう、大学の色んなことを教えてやった。
 最初は表情が硬かったものの、話していくと徐々に表情を和らげていった。

 きっと、遊星にも人には言えない大きなことを抱えているんだろう。
 隠遁屋敷は、そういう場所だ。



 

 俺の部屋で他愛のない話をしていると、遊星は何かを思い出したようで突然立ち上がった。




「部屋の荷物整理…しなきゃ…」




「大変だな、手伝うか?」




「ううん、大丈夫。ありがとう」




「そうか?なんか重いもんでもあったら気軽に言えよ。手伝うからさ」




 遊星はニッコリ笑うと、自室へと戻って行った。




 初対面の印象は、“不思議な子”だ。




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