普通ver ……さぁ、今日も元気よくカエルが落ちてくるのを待っていよう…… ……だなんて、毎回毎回しているわけではない…… 今日はだな、人間界でいう都内に来ている。あちらこちらで「熱中症に気をつけよう」「水分を摂ろう」と放送されている。…全くもってその通りである。寧ろ、水に浸かっていたいのが本望なのだが。 …日頃、水の中で穏やかにすいすいしてる奴が、何故にこんな街へ出てきて、沢山の人種が忙しい足取りの中、自分はその群に混ざって歩いていようか…。 人間以上に早く乾く己の皮膚、喉、…いや…、もう全体的にうんざりだった。此処まで来るのにどれ程の水が要たと考える? 水筒から始まり、ペットボトルやら…、ペットボトルやらペットボトルやら……全部ペットボトルじゃないか。 たまにそこらの公園の水道で、公共のトイレで、カラカラに今にも干からびそうな己(の皮膚)に水を吹っ掛けたか…。水浸しでトイレから出て来る不審な男に、どれだけの人々が怪訝な表情をしたり不審な表情をしたり……どれ程、俺が心の傷を負わされたか…相方は知るよしもない。 ………絶対見つけてみせる。 ぶつぶつと悪態をつきながら翡翠色に髪を靡かせたガノはふらふらしながらも相方、トトスを捜す為、都内をさまよい続けた。 その頃トトスはというと…、ガノがアスファルトの上を太陽がさんさんと照り付ける日照りの中、懸命に自分を捜してるとはつゆ知らず、のんびり冷房という名の空調設備が整った大きい造りの店内の中にいた。 「…なーんで、はぐれちゃうかなー」 トトスはしれっとしながらぷらぷらと土産屋だとか食品の並ぶ所で人に雇われたアイルーが作ったおいしそうな食品達に見惚れていた。 「…うまそう…」 「お客様ぁ、おひとついかがかニャ〜」 呟いただけなのだが…、板前の親父みたいな服を着てる可愛いらしいおチビさんが尋ねてきた。 「うん。ありがとうおチビさん」 当たり障りのない位の上品にみせた笑顔。 「…あ、よく見たらガノトトスさんだニャ〜」 「…おチビさん、しっ!」 「ニャ…!…」 あかん。あかん、ここは人間の住まう世界だからね、自分らがモンスターだってしれちゃーマズイわけよ。 咄嗟にアイルーの口を押さえた。全く、ヒヤヒヤするねぇこのおチビさんには。 …ま、頑張り屋さんで、ぼけっとして且つ、たまにドジ踏むあたりがまた可愛いのが彼らなのでトトスは大目にみた。 「内緒ねおチビさん」 「わかったニャ〜」 はにかむアイルーは可愛い。わし、小さいもん好きやからなー…なんてしみじみ思ってたらアイルーは腹減ってるんでしょう?と尋ねてきた。 「うん。減った。」 腹が減っている時のトトスは怖い。それはガノも同じこと。空腹を満たす為なら彼らは日頃穏やかでもいざとなったら極力残酷になれるからだ。 自制してるから、とトトスは掠れた声で軽く微笑みながらも苦しそうに額に汗を流し、空腹による衝動に耐えていた。 「なんでニャ〜?」 「ガノが来るまで待ってるのさ」 ーだって、ひとりで食べたって楽しくないでしょう?ー 冷え切った心で独りで生きてきた寂しいガノトトスにとって芽生えた温かさに近い感情。 それを本能なんかに潰されたくなかった。 「…なんでいないニャ?」 「ガノね、無自覚方向オンチなの」 「…ありゃー、ドンマイニャ…」 「でしょう?」 おチビさんと会話してるといきなり自分を呼んだ声がした。 振り返ると膝に両手をついて息切れるガノがいた。 「遅いよ、ガノ。何してたの」 「それはこっちの台詞なんだけどなぁ」 「方向オンチめっ!」 「トトス、あんたの方だろ方向オンチなのは!!無自覚にも程があるぜ!」 ……つまりどっちも無自覚方向オンチなのニャ〜…… アイルーは心配になった。 …アイルーはこれが母性本能かっ!と後になって悟る。 さらにアイルーを雇っている店の主人がいつまでもレジの前でのんきに話しあってどく気配のない二人に痺れを切らし質問を投げ掛けた。 「……何しに来たんだ、あんたらは!」 「「…………………」」 「………………」 固まるガノとトトス。さらに主人。口火を切ったのはトトス。 「…べつにないねぇ」 「「…ないのかよっ!!!!」」 無計画ボーイ 翡翠の青年は呆れあきれ微笑む。 …だれかこいつに常識を教えてやってくれ |