『捕食風景』 アプトノスの足音。 オルタロスの鳴き声。 リノプロスの威嚇の声。 デルクスの砂中を進む音。 冷ややかで静かな砂原の夜。 砂の混じる冷風が短い茶色の髪を揺らす。
「………。」
自分の中から聴こえる大きな鼓動と鼻につく臭い、ティガレックスはぼんやりとそれらを感じていた。
(あ〜…あちぃ…)
冷えた砂に吸い込まれていく赤を尻目に、目の前に広がる星の海をただ見つめる。 ふと、びちゃびちゃという鈍い水音と足音が聞こえて其方に視線を移した。
「ティガ君、死にそう?」
泥塗れの子供が感情の無い瞳でティガレックスを見下ろす。
「…んな訳…ねぇだろ…。」 「だって此処の砂、すっかり赤くなっちゃってるじゃん。」 「うるせっ…ボロス…!」
ティガレックスは忌々しいという気持ちを込めて睨むが、子供姿のボルボロスは足元の赤い砂を踏み締めながら明るく喋る。
「まあいいや、じゃあ僕眠いから帰るね!喰い尽くされない様に気を付けてね!」
ぱたぱたと手を振って立ち去るボルボロスから再び視線を夜空に戻す。 首筋からは未だに赤が流れて落ちていて、ティガレックスは体に纏わり付く生暖かさに嘆息。
「轟竜。」
否が応にも耳に馴染んでしまった低い声に眉をひそめた。
「まだ死んでねえな?」 「ったり前だろ…!」
にやりと嗤いながら足で頭を小突いてくるイビルジョーを、怒りを露わにして睨み付ける。
「なら来い。」
徐にティガレックスをひょいっと持ち上げて肩に担ぎ、赤い砂を愉しげに踏み鳴らして歩き出すイビルジョー。 一瞬目を丸くしたティガレックスだがすぐに顔を歪め、可能な限り力を込めてイビルジョーの背中に鋭い爪を突き刺した。
「……あ?」
突然襲った痛みに目を瞬かせ、首を捻って目に写るティガレックスの後頭部を睨んだ。
「何しやがる。」 「っ、これ以上てめえの好きにさせっかよっ…!!」
ずぶりと中の肉を抉る。 イビルジョーは痛みに顔をしかめて舌打ちをし、ティガレックスの体を捕らえていた手をぱっと離した。
「うあっ!?」
声を上げて砂地に落ちたティガレックスは、苛立たしげに拳で何度も何度も砂を叩く。 それを見てイビルジョーは腰を下ろして血と砂で汚れたティガレックスの頭に手を乗せた。
「おい轟竜、そんなに俺に喰われてえのかぁ?」 「っんでそうなんだよっ!!」
赤く染まった口の端をつり上げて喉を鳴らすイビルジョーに吼えて、自分の頭の上に乗っている手に噛み付いた。 背中に引き続き手からも血が溢れ出すが其れに構わず、自分の手に噛み付いているティガレックスを見てイビルジョーはますます愉しげに嗤う。
「俺の血に濡れるおまえも旨そうだなぁ。」 「……俺が何したっててめえを喜ばせちまうんだな…。」
急激に怒りが冷めてうんざりとした様子のティガレックス。 そんなティガレックスを気にする素振りも無く、イビルジョーはティガレックスの真っ赤な首筋に口を寄せ舌を這わせる。
「っ、いてぇよ馬鹿!!」 「あ?知るか。」 「知るかじゃねえ!てめえが喰い千切ったせいだろがっ!!」
イビルジョーの横っ面を殴りながら吼えるティガレックス。 しかし堪えた様子が微塵も無いイビルジョーに手を掴まれ、再び首筋に歯を突き立てられて体を強張らせる。
「痛っ!!」 「腹減ってんだ、獲物を喰って何が悪い?」 「っだから!!俺はてめえの獲物じゃねえっつってんだろがぁあああっ!!」
ティガレックスの咆哮が夜の砂原に轟いた。 咆哮【内側】でイビルジョーを吹っ飛ばしたティガレックスはふらつきながらも駆け出す。 そしてすぐに態勢を整えたイビルジョーが素早く追い掛ける。
「も〜、痴話喧嘩は余所でやって欲しいな〜。」
泥の上で寝転がっているボルボロスの冷ややかな呟きは、ブナハブラだけが耳にしていた…。 ★END★
ぐはぬあああー!!なんということだうっほほーう!外童子さまサイトの2345打踏んだらこんなにも素敵な小説を…!ああありがとうございます! 外童子さんからこんなにも素敵過ぎる恐暴竜と轟竜の小説を頂いてしまいました!!!!ぐほおお私は間抜けにも口半開きでにやにやしてました。あああ、外童子さまの小説やっぱり大好きです!鵺の野郎は幸せ過ぎです!またキリ番とか狙ってます。いえSTKしますからね∩^ω^∩ んもうありがとうございます!!大切にします!
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