月見酒
いい酒を貰った。小さな事だったが、お礼にとグラビモスがくれたのだ。
それは久方ぶりに訪れた沼地でだ。沼地は相変わらずじっとり湿った空気が辺りを漂いほぅ、と小さな息を吐く。火山とは違った空気に散策がてらに歩きだし途中、見慣れた子供をみつけた
「…バサル?」 「んむ。あ…ギザミのお兄ちゃん」 「こんな所で何をしているんだ?」
声をかけると眠たげに目をこすり寝ていたのかと苦笑いになる。だが、バサルモスがこんな所に一人で来るはずがないだろうとしゃがみこみ柔らかな髪をなでるとへにゃっと笑みを浮かべた
「えっとね、お母さんと沼地にきたの。でもね、ノノさんとお父さんおっかけてったの」 「…そ、そうか。ここで待ってるのか?」 「うん」
ノノとグラビモス。と言うことはカムか黒グラビモスが何かをやらかしたのだろうと察しがつきぞわり、悪寒を感じたが冷静を装い二人を待っているのかと問う。一人で待っていると言うことは沼地モンスターではないバサルは何があるか分からないためにしばし考え頭をなでる
「一人じゃ危ない。私もいよう」 「良いの?何かしにきたんじゃないの?」 「まぁな。今日はガミザミ達の様子をみにきただけだ。気にする必要はない」
くすりと笑い声を漏らし頭をなでつつ構わないとだけ言ってやりバサルの表情も嬉しそうに笑顔になる
しばらくして返り血を浴びたグラビモスが笑顔で帰ってきた。どうやらノノとグラビモスの二人でカムと黒グラビモスを狩ってきたらしい…ふとバサルとギザミに気付き軽く頭をさげる
「あらあら、ギザミさんも此方へ?奇遇ですね」 「あっああ…こんにちは。ガミザミの様子を見にな」 「そうでしたか。今日も天気が悪いですね」 「…そうだな。はっはは」
にこにこと笑みを浮かべているグラビモスとは対照的にびくり、悪寒を感じたギザミは口端をひくつかせ渇いた笑い声をあげるとひやり冷や汗が背を伝い落ちるのが分かった そんなギザミをよそにバサルは母親の元へ駆け寄りぎゅうと足に抱きつく
「お母さん、おかえり。ギザミのお兄ちゃんが一緒にいてくれたの」 「そうなの?有り難うございます。この子一人だと心配でしたが…ギザミさんがいたのなら安心しました」 「え、あぁ…まぁ見かけたから。バサルがあまり来ていないから何あるか分からなかったのもある」 「そうですか。すみません、ついノノさんと夫を締め上げ…違った。追っていまして」 (締め上げ…?!)
ふふっと笑顔を浮かべるグラビモスから恐怖の発言が飛びだし「私ったら」と苦笑いを浮かべるグラビモスにギザミはがたがた体を小刻みに震わせ雌とは改めて恐ろしいものだと感じた
「じゃ、じゃぁ私はこれで…」 「あ、待ってください」 「?何か他の用でも…」
「ええ」と笑みを浮かべるグラビモスがそっと差し出さしたのは藍色の布で包まれた何か。それを受け取り何かと眺める
「これは一体…」 「それはお酒です。この間メラルーさんたちから頂きまして…私たちは呑めないので良かったらどうぞ」 「そうか。なら有り難く」
しばしながめていたが中身が酒だときき礼を述べ親子とわかれ洞窟内を歩く
「さてこれはどうするか…一人では呑めないな」
せっかくの酒を独り占めするには勿体無いと誰を誘って呑むか考えふと紅髪の従者を思い浮かべ
「…あれを誘うか」
不思議と口元に笑みを浮かべ足早に洞窟を出た
…… 「らぁ!たぁっ」 「っ…遅い!」
がきん、がきっ!赤と紫の鋏がぶつかり合う。紫が懐に飛び込むと赤が隙を突き赤い鋏で紫の鋏を突き上げ喉元に鋏があてがわれる
「ぐっ…負けた」 「相変わらず隙だらけだな。その隙をどうにかしろといつも言っているだろう」 「…そうは言われても」
喉元にあてがわれる鋏にごくり、生唾を飲み苦い表情になりため息をつかれ鋏は退けられくしゃり頭を撫でる
「まぁまだお前は未熟だって事だ。精進することだな」 「……腹立つ」 「…何か言ったか?」 「いやなんでも」
ぶぅと唇を尖らせ文句を漏らすと笑みを浮かべるザザミが目につき悪寒を感じ首を横にふる 首をふる事に「なら良い」とくすり笑い声を漏らし鋏を眺める
「少し刃こぼれしているな。後で研ぐか…ん?」
軽く鋏をなでると一匹のヤオザミが現れウシャウシャ…と何か音が聞こえるだけだが、ザザミには分かっていてか頷く
「…分かった。すぐに行く、有り難う」 「誰か来ているのか?」 「ああ。客人がな」
かしゃっと音をたて鋏をたとみくすり笑い言われた場所へとザザミが向かいその後ろからザザミ亜種も続く よく晴れた青空が火山や沼地では見れない故に眩しい…と目を細ませると、後ろからかかるのは久しい声
「ギザミ。」 「…あ、青か」 「ザザミ、久しぶりだな。……お前もいたのか」 「…悪いかよ」 「特には」 「……」
ふっと笑みを浮かべそちらをみるなりふと隣にたつ紫髪が目につき不満気な声が漏ればちばち、二人の間に火花が散りだす…そんな沈黙を坂に破ったのはザザミ亜種
「さっきまで兄さんに手合わせしてもらってたんだよ」 「…何」 「ふん。さっきはよく動いて息上がってたぜ?」
口角を吊り上げさせにやり笑い己がよくザザミ原種といる事を強くアピールする。そんな挑発にはギザミはたまに流す事はあれどザザミ原種となれば話しは別だった
「さっきなんか隙をつかれて負けたけどな」 「…威張って言う事か」
ふふんと鼻を鳴らし自慢気に言う亜種にそんなに嬉しい事ではないだろうと原種である兄からのツッコミが入る。
そんな事にさえギザミは口元をひくつかせるがここでキレては…と自らに言いきかせ気持ちを落ち着かせる
(い、いかん。今日は違う意味できたのだから…) 「っはー…」 「ギザミ、どうした」 「あっああ、実はな…グラビモスに酒をもらってな。一緒に飲まないか?」 「酒?…そうだな。呑むか」 「っなら決まりだな!」
誘ったギザミはどえ返答が返ってくるかとザザミの返事があるまでの短い時間がいつもよる重たく感じにこりと笑みを浮かべるザザミ。ザザミの返答にはほっと安堵の息を吐く
「なら決まりだな」 「ああ!」
久しぶりにザザミと!と一人喜ぶギザミによくわかっていないザザミと、舌打ちを漏らすザザミ亜種。
今夜は明るい月の下で月見酒。
オマケ ギザミ「……(むすっ)」 ザザミ「どうした?ギザミ」 ギザミ「……なんで。なんで(ぷるぷる)」 ザザミ「?」 ギザミ「何でこいつがいるんだ!(亜種びしぃっ)」 ザザミ「ああ、二人で呑むのもあれかと思ってな(笑)」 ギザミ「あれってなんだ。あれって」 ザザミ「あれはあれだ。あれ」 ギザミ「全くわからんのだが…」 ザザミ亜「あんたが兄さんに手ださないように」 ギザミ「私が手をだす?それはない。貴様とは違う!(きぱっ)」 ザザミ亜「信じられないな」 ザザミ「そういってくれるな。ギザミも火山や沼地で色々あったんだろうから」 ザザミ亜「そうか。あんたも大変なんだな」 ギザミ「色々ってなんだ…はぁ二人きりで呑むはずが…はぁ(がっくし)」
完
相互記念で生田灯花さんから頂きました! わあああい何これ可愛いっ!まさかのギザミサザミ←サザミ亜種!がんばれギザミ!と応援したい^p^ ていうか小説の素敵すぎるこの描写っ!〜〜〜っ!たまりません!尊敬します。自分小説下手くそなのですごく羨ましい見習いたいです!ちょっとこれからもこっそり通わせて下さい\(^O^)/ しかもちょろっとバサルとグラビお母さん!も出てきたというなんとサービス…っ!さらにオルガロン夫婦もなんとキターーーーー!悶え死にます。うわあああなんと素敵な物を頂いたのでしょう。ありがとうございます!!大切にします!ありがとうございました!これからもよろしくお願いします^O^
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