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櫂三和



櫂の視線が手札に移る。素早く状況を判断し手札からリアガードにコールしていく。
相手の手札は2枚、ヴァンガードはG3、ダメージは相手が5枚で櫂が2枚。

ここで相手が持ちこたえる事はないだろう、と三和は思った。
何故なら櫂はスタンドアンドドローの時にファイナルターン宣言をしたからで、更に櫂のヴァンガードにはドラゴニック・オーバーロード、カウンターブラストが使えなくても強力なカードであることに変わりはない。


「バーのブースト、オーバーロードでヴァンガードをアタック!
ツインドライブ‥‥ゲット、ドロートリガー!」

三和の予想通り、トリガーを引き更にパワーアップしたオーバーロードに相手は守っても次の攻撃で負けると理解し、ノーガード。
櫂の勝利で終わった。

「どうよ?今のファイト」
「フン、くだらない」

櫂らしいセリフに三和はにひひっと面白そうに笑みをこぼす。

そこに後ろでひっそりと櫂のファイトを見ていたアイチが話しかける。

「か、櫂君!今のファイトの七ターン目がノーガードだったのって‥‥‥」
「お兄さん、そこもですけど三ターン目の事も忘れないでくださいよ」

櫂の前にたって一生懸命、自分の考察した櫂の戦術を話す二人。

(おー、アイチもカムイも頑張ってんなー)

その横で頭の後ろで手を組みながら三和は微笑む。つい最近まで無視していた考察に短くだが答え始めた櫂に三和は子供が成長したような気分になる。

(それもこれもアイチのおかげかもな!ま、俺も結構貢献したと思うけどさ)


などとニコニコしていたが、櫂が突然カバンを手に取り店から出て行ってしまった。


「櫂君?」
「なんだよいきなり!」
「うーん、よくわかんねえけどおいかけっか‥‥‥じゃあな!」

手早く椅子においていた自分のカバンを肩に掛け、ドアをくぐり櫂を追いかける。
実際の身長の半分くらいに見えるまで離れた背中を見つけ走り出す。
ちょうど櫂が信号に捕まり、距離が縮んでいく。近所では有名な時差別信号は変わるのが遅い、三和は信号が変わる前になんとか櫂の隣に肩を並べた。


「どうしたんだよいきなり帰るなんてさ、アイチ達びっくりしてたぞ」
「‥‥‥‥‥」

はぁ、と三和はため息を吐き苦笑いを浮かべる。言う気がないことがありありと伝わってくる。これじゃあどうしようもない。

そうして無言のままやっとかわった信号に歩きだそうとすると、櫂が先に歩き出す。

「お前は俺がほかの奴と話してて何とも思わないのか」


歩き出した瞬間に小さく声が聞こえてきて、その言葉に一瞬固まった三和だったがすぐに櫂の隣に走り寄る。

「なに、嫉妬してほしかった?」
「‥‥‥‥‥」

肘で櫂を小突きながら尋ねれば無言の肯定。
三和は残念だったなという気持ちを込めて小突き続ける。

「俺はいつもしてるがな」
「は?」

意味が分からないと声を上げた三和の肘を振り払いながら櫂は続ける。


「お前が話してる奴笑いかける奴全てに嫉妬してる」

突然の告白に再び固まり歩みを止める三和に構わず、櫂はにやりと笑みを浮かべながら。

「お前は俺だけに話しかけて俺だけに笑いかければいい」


俺だけを見てろ。
それだけ言って櫂は再び歩き出す。後ろは振り返らず、そこに誰かを待つという気配はない。
当の三和は後から櫂の言葉の恥ずかしさを理解し、一気に体温が上がりそれに比例するようにじわじわと健康的な肌が朱色に変貌していき、表情もきょとんとした表情から顔を歪め、恥ずかしさに耐えている表情に変わっていた。

「っ、子供かよ‥‥」

(こっちは嫉妬しきれないから蓋してるってのに‥‥‥!)

視界にとらえられるギリギリの位置にいる櫂がこちらを見てにやついている気がして、三和は深呼吸をして気持ちを落ち着かせ、早く追いついて罵倒の一つでもしてやろうと決めた。



片栗咲き誇る地



片栗=花言葉 嫉妬



...







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