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トロX



パキリと遠くて自分の力がはがれおちた気配を感じる。

「X‥‥?!」


Xの敗北は計画のうちだ。Xはあれで甘い部分があるし、自分の思い通りに行かないと動揺する部分も残っている。
カイトと戦い、ハルトの力を得た超銀河眼にXは敗北する、全ては計画通りだ。


けれど心のどこかで、Xなら計画を崩してしまうのではと思っていた。
否Xなら間違いなく過去の師弟の関係や自分に対する不信感を超えて、復讐を終えるその時までそばにいるのだと勝手に思い込んでいた。

紋章は所持者に加護と力を与えるかわりに、紋章が所持者から消え去れば、死んだように眠ってしまう。
紋章が消えるのは全身全霊をかけて戦い、負けたとき。


確かに準決勝で自分と当たるのはカイトでなければいけない、そのためにハルトの力を取りこんで感覚をリンクしたのだから。
そして全身全霊をかけてXとぶつかり僕への憎しみを増大したカイトと戦いカイトを倒すか、自分が倒されるかによって新たに復讐が進み、最終的には神代凌牙がフェイカーにとどめをさす。

厳密に立てられた完璧な計画、そのための踏み台としてX、W、Vには犠牲になってもらった。


そう、彼らは復讐のための小さな犠牲にすぎない。

「‥‥‥」


父子という垣根を越えて、自分に愛を向けたXを確かに私は愛していた。

下の息子たちとちがって控え目に遠慮がちに父さんと呼び、手伝っていた研究が少しでも進めば目を細めて喜ぶX、いやクリスはとても愛しい存在だった。
早くに妻を亡くし、子供を育てられるか不安だった私の不安をぬぐい去ろうと幼いながらに弟たちの世話を懸命に行うクリス。

その姿がやはりとても愛しくて、妻と接するように優しく愛をこめて抱きしめたりその額や髪、頬など余すところなくキスを送ったりした。
はにかみ、時に頬を染めるクリスは性別を超越した、ほんとうに特別な存在なのだとその父であることを誇らしく思っていた。


けれど今はどうだろう。もうその体に腕を回しても、クリスの背中で腕が交差することはない。余すとこなくキスを送ろうにも、体の半分がすでに化け物ではキスも出来ない。
Xと呼んでもXが微笑み返すこともない。父さんと、呼び慕うこともない。

それでも側には居てくれた。

名前を呼べばすぐに返事をした。Wが不信感を露わにすれば、侮辱は許さないと静かに怒りを見せた。
力を見せつけても、怯むことなく復讐が遂行できると隣に立っていた。


あぁ、あの子はその時何を考えていたのだろう。

大切なものを無くした時の喪失感を利用してきた。けれど無くしてからその存在の大きさに気付くなんて、滑稽も良いところではないだろうか。

「けれど、そんなもの復讐が完遂されれば関係ない」


もうすぐWと凌牙のデュエルが始まる。これで此方の準備が整う。フェイカーのゆがむ顔を思い浮かべて、腹を抱えて笑う。


誰もいない部屋に響くその声は、酷く空虚なものに聞こえた。



...







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