トロX
お父様たちと幸せに暮らしていたとき、私たちは今とは違う名前で呼ばれていた。
絶望を知り、トロンと出会い、初めて私たちはX、W、Vになった。それは本当はいいことなのかは分からない。
けれどーーー
「X」
「はいトロン」
呼ばれていたXはトロンの横に立ち、主人を見下ろすと野望に満ちたぎらぎらとした目がXを捉える。
ナンバーズの飛来、WDCの開催。フェイカーたちを滅する舞台が着実に整うこの状況にトロンは楽しそうに片方しか見えない目を細める。
「君たちの集めたナンバーズの中にはじゃじゃ馬が混ざっているね」
くるくると指の腹でまわるカードの名前を認識したXは、紋章の力なしに溢れ出るナンバーズの力を感じた。
「申し訳ありません、私たちの力が不十分のあまり」
頭をトロンの望む程度に下げる。
「いいんだよX、君達は本当によくやっている。
それに計画が進めばこれらナンバーズの全てを操る事ができるんだから」
トロンはカードを懐にしまい、テレビのリモコンを操作していつものアメコミアニメを再生する。
Xはだまってその様子をうかがう。
とても感情が篭もっているようには聞こえない笑い声と平坦な拍手、どこまでもアンバランスなXたちの主人。
けれど、その裏に隠れた残忍な本性もその幼い仮面に覆われた孤独なあなたの力になれるなら、記号のようなこの名前も悪くないとXは静かに思った。
メメントモリ
死を想え
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