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Xカイ



あの人は何時も遠くを見ている。それが昔はどこを、今はどこをみているかなんて俺には一生分からない。
気付いたら泡のようになくなってしまうあの人は、昔から俺にとっての憧れであり同時に越えたいと強く願う壁だった。


「師匠!こんにちは!」
「カイトは今日も元気だな」

懐かしい日々、俺とハルトの世界とはまた違う、俺と師匠の世界が広がる。

「はい!今日は課題も全部終わらせてます!ですから」

輝かせた目をみて師匠は目を細めて自身の口元に手をやる。


「ふふっ、分かっている。答え合わせが終わったらデュエルをしよう」

お邪魔させてもらうよ。それが週末の恒例行事であり、俺はその日がくるのをとても楽しみにしていた。あの頃はもっと、もっと早く時が過ぎればいいとずっと願っていた。


今の俺はもっとゆっくり世界が進めばいいと願っている。それはハルトの病がこれ以上進まないように、短い時間でより多くのナンバーズを集めたいから。

そして、いつか来てしまうあの人との対峙を恐れているからーー


自分は変わったと自覚している。昔以上にハルト以外の人間を忌み嫌い、人の魂を狩ってきたこの手は黒く汚れている。だがそれでも俺はあの人の考えていることが分からなかった。
わずかな時間の邂逅。それだけでも十分あの人の今を垣間見ることは出来た。

その瞳は昔と変わらず遠くを見ていて、俺を写すことはなくあの頃はあった光も欠片の一つも見えない。

そして、それは俺が一番恐れていたことが起こるという前置きであるなんていやでも理解できた。あの人と対峙してどちらかが滅びる。
それが肉体的であれ精神的であれ、もう二度と俺とあの人が出会うことがなくなるというどうしようもない恐怖。
あの人の消息が分からなくなっても、どこかで生きていると確信を持っていたから正気を保っていられた。けれどハルトが目覚めず、いつの間にか心のよりどころにしていたあの人がいない世界で、俺は正気を保って生きていけるだろうか。

それでも運命は変わらない。あの人と俺が対峙するのは運命いや避けられようもない必然。


あの人に勝ちたいと思う。ハルトをあんな風にしたあの人に絶対に勝ちたいと思う。
けれど、どこかであの人に倒されるならそれでもいい。などというバカげた考えが浮かんでは消える。あの人の血と肉になれなくとも、俺はあの人の記憶の一片に深く刻まれる存在であればいいと思ってしまう。

これが、昔から想い続けてきた感情の結論なのだろうか。あの人がそれで幸せなら、幸せになれると言うなら俺はーーーー



哀れな人の夢
貴方のそばで咲く花になりたいのです
貴方の目に映らなくともただそこにいたいのです



20120422







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