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魔法の言葉






「好きと嫌いは魔法の言葉」

そう言っていたのは誰だっただろう。ここに来る前に立ち寄ったバーのマスターだったろうか、それとも遠く遠く今では思い出せない幼いころに世話になった人だろうか。
誰が行ったのかも覚えていないその言葉をぼんやり思い出したのは、目の前で突然始まった他人同士の喧嘩と、あっという間の仲直りの現場を目撃したからだろう。

なるほど確かに、言葉が言うとおり嫌いと言えば人は悲しげに泣き、好きと言えば嬉しげに泣く。同じ泣くという行為のはずなのに込められた感情がここまで変わるのは、確かに二つの言葉は魔法のようだ。

けれど魔法を連発すればいいことはない。言葉もしかり、好きも嫌いも言い続ければただの単純な言葉遊びに成下がる。貴重なものなのだ。人に好意を、嫌悪を示す言葉を口にするということは。


誰もいない崩れかけの廃墟の中、まだ天井の残ったいくつかの部屋のうちの一部屋で、ぼんやりと彼は崩れた瓦礫を拾い上げた。彼がここにいることは、ゾロアークが限られた人間にだけ伝えてくれた。その人達は誰もがポケモンと信頼関係を築いている、信頼できる人間ばかりだった。











昔どこかの作家がI love youを試行錯誤の末「月が綺麗ですね」と訳したらしい。

ためらうことなく落ちた言葉に、自分でも困った笑みを浮かべてしまう。

「」



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話が膨らまなかった


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