回りくどいことはもうやめましょう *
主♂N
あれからどれくらいたったかな。
君が目の前から消えて、もうすぐ2年経ってしまう。
本当は分かっていたんだ、君はきっと捕まえようとしても雲みたいにつかめないって。
アデクさんからあの後リーグは移転され、あのドラゴン使いの少女がチャンピオンになったって聞いたんだ。
もし、この手紙を君が読むことがあったら返事はいらないので持っていてください。
まさかこんな薄い手紙を重くなるからなんて言って捨てたりしないよね。
手紙は、人の気持ちの塊だから、僕の気持ちを持っていてほしい。
次に会う日がいつになるか分からない。最近またイッシュが騒がしいらしいけど、僕は君が戻ってもイッシュには帰らないと思う。
君に会いたいのに、会える機会を潰す愚か者とホワイトやチェレンに怒られそうだ。
けどこれから起こるかもしれないその騒ぎの中で、君がまた成長するならきっと僕は君の成長を妨げてしまうから‥‥
そうだね。次に会ったらまた全力で勝負しよう。
僕のポケモンと君のポケモン、違うバトルを楽しもう。
それじゃあこの手紙が無事君に届くことを祈って。
ブラック
名前で締めくくられた手紙を読み終えたNは城の玉座にもたれかかる。
この手紙を何度読み返しただろう。ゲーチスの率いるプラズマ団の理想は潰され、事態を収束してくれた子たちはたまにここを訪れ、イッシュの近況を教えてくれる。
ときにはかつてボクと対峙したチェレンやベル、さらにはホワイトやアデクを連れてきた。
勿論ホワイトには怒られてしまったけど、それが凄く温かくて懐かしくて嬉しかった。
その輪の中にいなかった君が、ゼクロムが教えてくれた異変よりもさらに前に届いた手紙を読んだとき、彼も進んでるんだと安心した。
お互い子供でつながらなかった心は、きっと次に会ったらつながると信じてる。
「Nさん、こんにちは」
「やあよく来たね」
玉座の上で空を見ていると、声が聞こえて入口から遠慮がちにこちらを見ている目に笑いかける。
けど、その様子は少しだけいつもと違った。戸惑うような、焦るようなそんな表情を浮かべている。
「どうかしたのかい?」
「どうかしたのかじゃないよ。こんなところに隠れてレシラムに聞いてもよくわからなかったし、この子いなかったらこれなかったよ」
地下なのに風がふいたような気がした。
あの時と変わらないその瞳がボクを射抜く。その輝く美しさに呼吸が止まったように錯覚してしまう。
そんなボクの様子に、面倒くさそうに帽子をいじりながら、カツカツと音を立てて僕に近づいてくる。
その音に耐えられなくなって玉座から立ち上がり、走り寄って名前を叫んだ。
「ブラック!!」
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お察しの通り途中で文章まとまんないねって投げだすことを決めました