敵→友達
サターンとダイヤ
サターンはギンガ団トバリビルの最上階の一室で仕事をしていた。書類を提出しにくる団員の浮き足立った空気に何かと予定カレンダーを見直せば今日は2/14バレンタインだった。
思い返せば一週間ほど前から今日の休み届や早退届を大量に受け取っていた気がしたサターンは地方を滅ぼそうとした団体もやはり人の集まりなのだと実感した。
気を取り直して書類に目を通しているとぱたぱたと部屋の外から走り回る音が聞こえてくる。その音の主に注意しようと席を立ち上がった瞬間ドアが開いた。
「サターンさんこんにちは」
サターンは入ってきた人物に驚く。彼女、ダイヤこそこの団体のリーダーのアカギを止めた人物だからではない。
「珍しいな、シンオウに帰ってきるなんて」
彼女が放浪人だからだ。
「はい、サターンさんは相変わらずみたいですね」
ドアをしめ、ダイヤはサターンの手元の書類に目を向ける。たまに事務仕事をするダイヤから見てもその量の多さには驚きを隠せない。
「それでお前は何故ここに?今日はバレンタインだろう」
その視線をスルーしながらサターンはダイヤに尋ねる。自分達に鎌掛けていないで本命の元に行けばいいものをとまた書類に視線を戻す。
「‥‥‥‥少しくらい思いあたることないんですか?」
ダイヤの呆れた声と表情にサターンは首をひねるが特にない。そんなサターンにため息をつきながらダイヤは手に何かを取りサターンの顔に近づけた。
いきなりのことにサターンはびくりと小さく跳ねる。そして目の前にある箱を凝視する。
「ハッピーバレンタイン!」
その声は落ち着きを払っているせいかその裏の感情を読みとることができないが、バレンタインにプレゼントをくれる事理解したサターンは箱を手に取る。
箱は薄ピンクの包装が施されており赤のワンポイントリボンがついていてとても可愛らしい。
「あけていいか?」
首を縦に振ったので包みを開けていく、中にはトリュフチョコが数種類入っており開けたなら食べるのが道理と一つをつまみ口に運ぶ。
口の中に広がるチョコの甘味に心が軽くなった気になる。
その癖になる味わいについ二個目に手を伸ばせばおもむろにダイヤが口を開く。
「実のところフロントの一人に頼まれたんですよ、部下からは受け取らないから私から渡して少しは休ませてあげてほしいって」
サターンは一瞬動きを止めたがまたチョコを口に含む。その顔がうっすら赤くなっているのに気付いたダイヤは満面の笑みを浮かべる。
「あなたも女性なんですから体は大切にしてくださいね」
「お前に言われたくない。けどチョコはありがとう」
サターンの切り返しといきなりの感謝の言葉にダイヤは虚を突かれつい赤面してしまう。
「サターンさんが男だった絶対今ので惚れてました」
「こっちはお前みたいなのを好きにはならないだろうな」
和やかな空気と冷たい空気が混じり合い部屋の中は不思議な空気になっている。少しの沈黙のあと口を開いたのはダイヤだった。
「じゃあそろそろいきます、新エネルギー見つけて国際警察の監視から抜けられるといいですね」
「お前に言われなくても」
部屋から出て行ったダイヤも部屋にいるサターンもとても清々しい表情をしていた。
敵→友達
でもそこに愛はない
それも構わないと思えるものがお互いあったのだ
fin.
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バレンタインに書いたもの
メインにはこれの打ち直しがあがるかもしれません